異業種から介護業界への転職を考えておられる人で、「介護業界は大変そうだけど自分にもできるのか」と不安に感じておられる人は少なくないと思います。また、介護業界で働いておられる人の中にも、現職場に対して不満があり転職を考えているが、「転職先の職場もブラックだったら・・・」と不安に感じて、なかなか転職活動に踏み出せない人もおられると思います。
介護業界は人間関係や不規則な勤務、認知症高齢者への対応などで大変な面もありますが、少しでも「楽な施設」や「働きやすい施設」で長く勤めたいと思う方は多いのではないかと思います。
この記事では「楽な施設」や「働きやすい施設」を見極める際のポイントを紹介します。また、介護業界の施設形態の種類や特徴、メリット・デメリットなども解説します。
「楽な施設」「働きやすい施設」とは
「楽な施設」「働きやすい施設」を探す前に、「自分にとって楽な施設、働きやすい施設とは」と考える必要があります。楽な施設、働きやすい施設といっても、人それぞれ違う可能性があります。「夜勤が無ければいい・不規則な勤務時間でなければ良い」と考える人もいれば「レクレーションなどが無ければ楽だ」と考える人もいます。
自分にとって楽な施設、働きやすい施設を考える際に自分がやりたくないこと、自分が苦手なことをリストアップしていくことをおすすめします。自分にとってやりたくないこと、苦手なことをし続けなければならないというのは想像以上にきつく、精神的に病んでしまう可能性があります。
自分がやりたくないこと、自分が苦手なことをリストアップしたら「絶対したくないこと・出来ないこと」と「何とか出来そうなこと」を分けてみてください。働く上で、自分がやりたくないこと、自分が苦手なことを全部しなくてもいいということは現実的には不可能で、妥協しなければならないことが出てきます。
「自分にとって楽な施設、働きやすい施設とは」を考えた上で、「どんな施設形態で働くのか」、「労働環境で何を重視するのか」などが決まってきます。
介護業界が未経験でも働きやすい職場とは
介護業界未経験者は働き始めは分からないことばかりで不安に感じることが多くあると思います。少しでも早く仕事を覚え、職員の輪の中に溶け込んでいく必要があります。
●教育・指導体制が整っている・先輩職員や上司に相談しやすい環境である施設
介護業界経験者にも重要なことですが、未経験者には最も重要なことと言ってもいいかもしれません。未経験で入職した場合、介護に関して専門的な知識もスキルもありません。
教育・指導体制が整っていない施設に入ってしまうと
- ほったらかしにされてしまい、何をすればいいのか分からない、何も出来ない。
- 先輩職員ごとに指導が異なり混乱してしまう
- スキルがなかなかアップしないため転倒・転落事故を起こしやすくなる。介助をするのが怖くなる
といったことで苦労する可能性があります。
また、施設ごとに業務のやり方や進め方などは違ってきます。業務で分からないことやあやふやなことが有ればすぐに先輩職員や上司に相談し、はっきりとさせる必要があります。先輩職員や上司が常に忙しそうにしており、相談する機会がなかなかない職場ではベテランの介護士の場合でも入職後に苦労します。
入職前は教育・指導体制や上司などへの相談体制などを確認しておくことが大切です。
各施設形態の特徴とメリット・デメリットについて
介護士として働こうとした場合、特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスなど様々な施設形態があり、どの施設にするのか迷ってしまうところです。施設形態によって働き方などが大きく変わってきます。
それぞれの施設形態の特徴やメリット・デメリットを考慮したうえで、自分にとって「働きやすい施設」「楽な施設」はどれかを選んでいく必要があります。
●特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは、通称「特養(とくよう)」と呼ばれ、地方公共団体や社会福祉法人が運営する公的な介護施設で、自宅での自力生活が困難になり介護が必要となった方が暮らします。65歳以上で要介護3以上の比較的介護度の高い方が入居しており、他の介護施設に比べると施設の規模が大きいのが特徴です。介護士は24時間365日シフトを組みながら入居者を介護します。
・メリット
給料は他の介護施設と比べると高め。規模も大きなところが大きく、入居者に対して介護士の数も多く、チームで連携して業務を進められ、経験を積んだベテラン介護士から介護知識やスキルを習得できます。
・デメリット
介護度の高い入居者が多いため、排泄や入浴などの介助では介護士への身体的な負担が大きくなる。早番、遅出、夜勤があり不規則な勤務形態で生活のリズムが狂いやすい。施設内で亡くなるまで生活される入居者も多いため、入居者の死に目に会う可能性があり、精神的に辛くなることもあります。
●介護老人保健施設
介護老人保健施設は、通称「老健(ろうけん)」と呼ばれ、入居者の在宅復帰に向けて医療ケアやリハビリを実施する施設で、病院と在宅の中間施設と位置付けられています。入居者の介護度は特養と比べると低く、入居者の入退所の回転率が高い特徴があります。
・メリット
給料は老健も介護施設全体では比較的高めである。介護度が低めであるため、特養と比べると身体的な負担は少ない。医師や看護師、理学療法士などの専門職との連携を実感でき、医療的ケアやリハビリなどの知識や技術を学ぶことが出来る。入居者が元気になっていく過程を見られたり、実感できます。
・デメリット
老健も早番、遅出、夜勤があり不規則な勤務形態で生活のリズムが狂いやすい。入居者の入れ替わりが多いため、その都度、信頼関係を構築していかなければならない。
●有料老人ホーム
有料老人ホームは主に民間企業が運営する施設で、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類に分かれ、入居者の条件は施設によって異なり、入居者の介護度、提供するサービス、運営方針、入居費用なども異なります。高級ホテルのような施設もあります。ただし、施設によっては、介護度や医療の必要性が上がると退去しなければならない施設もあります。
介護付有料老人ホームは24時間介護を提供しています。住宅型有料老人ホームは常駐の職員が介護を提供することはなく、介護サービスが必要な入居者は、各自で訪問介護やデイサービスを利用してもらうことになります。健康型有料老人ホームは健康な方が入所する施設で、生活サービスを受けながら暮らしています。
・メリット
住宅型や健康型などは介護度が低い入居者が多いため、身体にかかる負担が軽くなります。また、接客やサービスのスキルを身に付けられる機会もあります。
・デメリット
住宅型や健康型などは介護スキルを身に付ける機会が他の施設形態と比べると少なくなります。また、中には利益重視が強い施設もあります。
●サービス付き高齢者住宅
サ高住とも呼ばれ、バリアフリー構造の高齢者向けの賃貸住宅で、自立している方や介護度が軽い方が利用する施設です。安否確認と生活相談を提供しており、入居者が介護が必要になった場合は訪問介護などを利用します。
・メリット
自立、介護度の低い入居者が多い施設や、認知症の人を受け入れない施設も多くあるため、身体的・精神的負担が少なめになることもある。また、接遇マナーも身に付ける機会があります。
・デメリット
介護度の低い入居者だと、介護スキルを身に付ける機会が少なくなります。
●グループホーム
グループホームは要支援2または要介護1以上で、認知症の人が5〜9人を1ユニットとして、共同生活を送る施設です。入居者が自分でできることは自分でしていただき、認知症の進行を遅らせることを目的としています。介護士も入居者と一緒に調理や掃除を行います。
・メリット
他の施設形態と小人数の入居者であるため、目が届きやすく家庭的な雰囲気がある。入居者1人1人に寄り添う介護が出来ます。
・デメリット
食事を作ったり洗濯するなどの業務があるため家事が出来ないと厳しい。夜間は1ユニットを介護士1人で対応している施設が多いため、肉体的・精神的な負担が大きい。職員や入居者と人間関係がこじれると辛い。
●小規模多機能型施設
要介護者に対して「訪問」、「通所」、「宿泊」のサービスを組み合わせて一体として、同一事業所が提供しています。
・メリット
訪問、通所、宿泊など幅広い業務をこなす必要があり介護スキルを上げることが出来ます。
・デメリット
24時間365日サービスを提供するため夜勤があります。利用者の当日の状況次第により、泊まりが通いになることなどがあり、柔軟性が求められます。
●病院
病院で働く場合は「看護助手」と呼ばれることが多くなります。主な仕事は入院している患者の対応をすることで、入浴・食事・排泄・衣類の着脱の介助などの生活介助や身の回りの世話を行います。看護師の補助的な役割をします。
・メリット
福利厚生が充実している傾向があります。医療に関する知識を身に付ける機会が多くあります。
・デメリット
医師や看護師と看護助手(介護士)の間には上下関係があり、時には見下されていると感じ、ストレスになることもあります。
●デイサービス
要支援または要介護の在宅高齢者を対象に、入浴・食事・機能訓練・レクリエーションなどのサービスを日帰りで提供する施設です。利用者は比較的自立度が高い人が多いです。また、日曜日を休みとしている施設が多いのも特徴です。しかし、中には宿泊サービスを行っているデイサービスもあり、その場合は夜勤や早出、遅出、日曜勤務がある場合もあります。
・メリット
利用者は比較的自立度が高い人が多いため身体的な負担は少なめです。宿泊サービスが無いデイサービスであれば夜勤はなく、日曜日や年末年始が休みであることが多く、勤務時間も定まっています。
・デメリット
レクレーションやクリスマス会などの行事に力を入れている施設では、企画力や場を盛り上がらせる力が必要になってきます。利用者の入れ替わりが多いため一人一人にじっくり関われないこともある。
●訪問介護
介護が必要な高齢者の家に介護士1人で訪問して必要とする介護サービスを提供します。排泄、食事、着替えなどの身体介護や掃除・洗濯や調理などの家事業務を行います。24時間対応を行っている事業所も一部あります。
・メリット
経験が浅いうちは先輩職員と同行しますが、慣れてきたら一人で訪問介護を行います。よって、職場の人間関係に悩まされることは少ないです。また、利用者とじっくりと向き合うことができます。
・デメリット
正社員での求人が少なく、非正規求人が多いです。時間内にサービスや記録をしないといけないため、時間管理能力が求められます。また、緊急事態にも1人で対応しなければなりません。その他、方向音痴であると利用者に迷惑をかける可能性がある。
働きやすい職場を選ぶためのポイント
●就職・転職するにあたって何を重視するのか
自分が働きやすい職場を探す場合、働く上で何を重視するのかを考える必要があります。まずは、重視する項目をリストアップしてみると良いでしょう。「介護スキルのアップを重視するのか」、「利用者や入居者とじっくり関わりたいのか」、「身体に負担がかからないことを重視するのか」、「夜勤が無い介護施設で働きたい」などに何を重視するのかで勤める施設形態が変わってきます。
リストアップしたら、優先順位を考えてみることも重要です。自分の希望が全て満たせる職場を見つけるということはほぼ不可能であるため、妥協しなければならないことが何個か出てきます。絶対に譲れないこと、妥協してもいいことを明確にしておきましょう。
●施設についてよく調べておきましょう
施設の労働環境、福利厚生、雰囲気など気になることはしっかりと調べておきましょう。直接施設に聞いてみるのも良いですが、聞きにくいことは転職エージェントを通して聞いてみるのも1つの方法です。可能であれば施設見学をしてみると良いでしょう。職員や利用者の雰囲気が分かります。
気を付けておかなければならない点は、頻繁に求人が出ている施設などは注意した方がよいでしょう。また施設見学をしてみて、職員や利用者の雰囲気についてあまり良い印象を受けなかった場合は要注意です。その他、可能であれば転職エージェントを通して、利用者・入居者の要介護度の高い人や認知症の利用者・入居者で対応が大変な人がどのくらいおられるかなども聞いてみるとよいでしょう。
まとめ
誰もが「楽な施設」「働きやすい施設」で働きたいと思っている人は多いと思いますが、それは人それぞれ違う可能性があります。
重要なことは
- 自分にとって「楽な施設」、「働きやすい施設」とはどんな施設なのか
- 自分に合った施設形態とは
- 自分が働こうとしている施設はどんなところか
といったことをしっかり調べたり、考えることが重要だと思います。自分に合った職場を見つけられると幸福度も増します。
最後まで読んでいただきありがとうございます。