入職してはダメな施設とは-ブラックな介護施設の見分け方について

介護業界といえば「給料が安い」、「人間関係が大変」、「勤務時間が不規則」といったマイナスイメージを持っておられる方は少なくないと思います。

ただでさえ大変そうなイメージがある介護業界で、ブラックな施設で勤めてしまうと心身が病んでしまい、後々取り返しのつかないことになってしまう可能性があります。ブラックな施設に勤めるメリットは全くありません。

介護業界への転職を考えておられる方、「現在自分が勤めている施設がブラックな施設かも」と不安に感じておられる方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

ブラックな介護施設とは

ブラックな介護施設では職員が慢性的に不足していることが多く、労働環境や介護現場が過酷な状況になっており、職員1人1人に負担が多くなってしまいがちです。

「長時間勤務が当たり前」や「休みがとりにくい」、「人間関係が険悪」などといった状況に陥りやすくなります。

労働基準監督署や厚生労働省などもブラックな施設を減らすために対策を行っていますが、現在もブラックな施設は存在しています。

ブラック施設かどうかを見抜いたり、判断するためには、「ブラック施設の特徴にはどんなものがあるのか」といったことを知っておく必要があります。

●職場・施設の労働環境、人間関係などからチェック

職場・施設の労働環境、人間関係などについては、入職してみないと分からない部分があり、面接時などでは確認しにくい部分もありますが、転職口コミサイトや転職エージェントなどを活用してみる方法もあります。また、知り合いに介護業界で何度か転職している人がいれば、その人がさまざまな施設の評判について知っている可能性があります。

★ブラック施設特徴リスト

転職を考えておられる人で、入職しようとしている施設が以下の特徴に当てはまらないか可能な限り調べてみてください。また、現在、介護施設で勤めている方も、自分の施設に以下の特徴が当てはまらないか確認してみてください。

・求人票の条件や面接時の条件と入職後の条件が異なる

介護施設に限らず、ブラック企業では応募者を集めるために求人票では好条件を提示して、内定が決まってから労働条件を変えるという方法がよく使われます。

「求人票に書かれていた給与より実際の額は安かった」、「残業は無いと聞いていたが、実際は毎日のように残業があった」など条件が違うことがあります。

求人票に書かれている内容というものは、全ての採用者に適用されるものではなく、採用選考時に応募者が施設が求めるレベルに達していなければ、労働条件を見直して提示し、採用するのであれば問題ないとされています。

しかし、内定後にもらう「雇用契約書」や「労働条件通知書」で示された条件と実際の労働条件が違う場合は問題になります。労働者は明示された条件通りにしてもらうよう要求することが出来ます。

・有給休暇を取得しにくい雰囲気がある・休みが少ない

介護業界は他業界と比べて有給休暇や連休が取りにくい業界ですが、有給休暇の取得は、労働者の権利です。有給休暇を申請した場合、別の日でも可能であるかを確認するために上司が取得理由を尋ねること自体は違法ではありませんが、有給休暇取得を「拒否する」ことは出来ません。また、年間の有給休暇の取得は義務であるため、有給休暇が取得できないことは本来あってはなりません。

介護現場では、他職員の欠勤のため急遽休日が勤務日となることがあります。そうなったときに代休がきちんと取れるかどうかも注意しておいたほうがよいです。ブラック施設では人材不足のため、休日出勤の代休が取れないということがよくあります。

・代わりの人がいないとシフトが休めない

体調不良や家庭内の事情などで急遽、どうしても休まなければならないことはあります。しかし、休みを申し出た時に、「シフトに代わりに出勤できる人がいなければ勤務してください」といった命令は違法になります。

・サービス残業が多い・長時間労働が多い

労働基準法では1日8時間・週40時間を超えて従業員を働かせることは原則として禁止しており、法定時間を超えて労働させる場合は残業代を払わなければなりません。

残業が発生しても残業代を払わないのは、当然違法になります。サービス残業や長時間勤務が当たり前になっており、特に対策を検討しない施設は、職員に大きな負担が掛かっていることについて何とも思っていない可能性があるので、そういう施設で我慢して働き続けることはありません。転職などを検討してみるとよいでしょう。

・入居者や利用者からの暴力・暴言・セクハラに対して対策を検討しない

入居者や利用者からの暴力、暴言、セクハラというのは介護士にとって大きな精神的負担となります。利用者が認知症であった場合は上司などから「認知症だから仕方ない」、「我慢しない」と言われたり、ひどい場合は「あなたの対応に問題がある」と言われ、特にどのようにすれば良いかなどのアドバイスをされないこともあります。

利用者からの暴力、暴言、セクハラに対して何らかの対策を取らない施設は介護士が苦しんでいることに対して何とも思っていない可能性があるので、こういう職場も我慢し続ける必要はありません。転職などを検討してみるとよいでしょう。

・介護職員が許可されていない医療行為を行っている

介護士の医療行為は違法です。一部条件付きで出来ることもありますが、ほとんどは医師や看護師に任せなければなりません。もし事故が起こった場合は施設だけでなく介護士個人も責任を問われる可能性があります。

介護士が医療行為を日常的に行っている施設はブラックである可能性が高いです。

・入居者や利用者に対して雑に対応する

利用者や入居者に対して雑に対応していたり、虐待ともとれるような行為をしている施設も要注意です。職員の教育が行き届いていなかったり、人間関係や労働環境が劣悪である可能性があります。職員に精神的、肉体的な余裕が無いために利用者や入居者に対してきつく当たったり、雑に対応してしまっている可能性があります。

そのような施設に勤め続けていると精神を病んでしまう可能性があります。

・新人などに対していじめがある

介護の仕事はチームプレーで動いているため、職員間でいじめがあれば業務に大きな支障を及ぼしてしまいます。新人職員は勤務し始めは、業務や業務の流れを把握しきれていなかったり、職員の輪の中に溶け込めていないことがあるため、人間関係が悪い職場や人間性に問題のある職員がいる職場ではいじめを受けてしまうことがあります。

上司に相談しても改善が見られない場合は転職を検討してみましょう。

・人間関係が悪い

労働環境が劣悪な施設では、職員に精神的な余裕が無いため、人間関係も悪くなっている可能性があります。介護の仕事はチームプレーで動いているため、人間関係にも問題があれば業務に支障が出てきます。

職員同士の陰口や悪口が日常的な職場や殺伐とした人間関係の中で働き続けることは精神に悪影響を及ぼします。ストレスで体調を崩してしまうことがあるので注意が必要です。

●求人・面接などからブラック施設かどうかを見抜く

求人情報や面接時、会社訪問などで違和感を感じた場合は、入職するかどうかについて慎重に判断した方が良いでしょう。

ブラック施設の特徴リスト

会社訪問や面接時は緊張するかもしれませんが、職員や利用者の雰囲気や様子というのはブラックな施設かどうかを判断するのに参考になります。可能な限り観察しておきましょう。

求人

求人面で注目する点としては

  • 常に求人を出していないか
  • 近隣の他施設と給与が高すぎないか

といった点です。

常に求人を出している施設は労働環境が過酷であり、職員が定着しにくく、入れ替わりが激しい可能性があります。

また、近隣の他施設と給与が高すぎる場合も要注意です。こちらも労働環境が過酷であるため、離職者が出ることを予測して好条件を示して応募者を多く集めようとしている可能性があります。

その他、「即日採用」や「無資格OK」と書いてある場合も要注意です。無資格でもすぐに採用しなければならないほど、職員が不足している可能性があります。

・会社訪問

会社訪問時に気を付けることとして

  • 介護士や利用者、入居者の様子や雰囲気
  • 施設は掃除が行き届いているか、整理整頓が出来ているか

会社訪問時に介護士や利用者、入居者の様子や雰囲気も確認しておくことをおすすめします。介護士や利用者、入居者に笑顔が無く、何となく暗い雰囲気を感じた場合は要注意です。また、介護士同士の言葉遣いや職員と利用者、入居者との言葉遣いがきつい場合も要注意です。介護士に余裕が無いぐらい劣悪な労働環境である可能性があります。

掃除が行き届いているかどうかも確認することをおすすめします。掃除が行き届いていない、整理整頓が出来ていない施設は仕事が忙しすぎて、衛生面や備品・書類管理などに気を使う余裕が無い可能性があります。

・面接

面接時に注意する点としては

  • 応募者に対して誠意を感じない
  • 応募者の質問にちゃんと答えてくれるか

といった点です。

面接官は入職後の上司となり、一緒に働く可能性があります。その面接官が高圧的な態度や無気力な態度で応募者に対応した場合は注意が必要です。応募者に対して誠意を持って対応しない面接官は、入職後も部下の介護士に対してあまりいい対応をしない可能性があります。

守秘義務に関することは答えることは出来ませんが、応募者の質問に対して、答えを濁した場合も注意が必要です。応募者に対して知られたくないことや不都合なことがある可能性があります。また面接官が現場を把握しきれていない可能性もあります。

その他、面接官が簡単な質問を少ししただけで内定を出す施設も要注意です。

・施設側の都合が優先される

面接日や入職日などを施設側の都合を優先させて決めてしまう場合は要注意です。本来、面接日や入職日は施設側と応募者が日程調整して決めるものですが、施設側の都合を優先させて物事をどんどん決めてしまう場合はブラックである可能性があります。

ブラック施設に入ってしまったら

ブラック施設への入職は避けたいものですが、どんなに気を付けていても、ブラック施設への入職を完全に防ぐことは出来ません。

もしブラック施設へ入職してしまったら、我慢するのではなく「労働組合の利用」、「未払いの残業代の請求」、「転職の検討」といった対処を行うことをおすすめします。

●労働組合を利用する

労働組合は労働者が主体となって労働環境を改善していくように働きかける組織であるため、改善が見込めそうなときは利用してみるとよいでしょう。

●未払いの残業代を請求する

サービス残業が日常化している場合は残業代も請求しましょう。タイムカードなどの出退勤が確認できるものがあると証拠として残るので、写しなどを取るとよいでしょう。

もし、残業代を請求しても応じてくれない場合は、転職を検討しつつ、労働基準監督署に通報してみましょう。

ただし、残業代の請求にも時効があるので注意が必要です。

●転職を検討する

ブラック施設では安心して働き続けることが出来ないため、転職したほうが良い可能性があります。すぐにでも辞めなければ身体や精神を病んでしまいそうな施設であればすぐにでも転職する必要があります。しかし、数年は我慢できそうであれば、経験を積んで、介護福祉士の資格を取得してからより良い施設へ転職する方法もあります。

経験を積んで資格を取得してから転職する場合は転職エージェントを利用することをおすすめします。施設の内情や職員の様子を教えてもらうこともできます。

まとめ

介護業界にもブラックな施設というのは残念ながら存在します。ブラックな施設で我慢し続けても何らプラスになりません。自分の職場がブラックで、長く勤め続けることが困難であると感じた場合は転職を強くおすすめします。

ただし、気を付けなければならない人は、転職経験が無く、同じ施設に長いこと勤めている人です。他人からすればブラックな施設と感じる場合でも、同じ施設に長年勤めていると現在の労働環境などが当たり前と思ってしまうことがあります。そういう人も、現在の施設について、「本当に長く勤められそうか」、「自分の施設はブラックではないか」といったことを一度ゆっくりと考えてみるのも良いでしょう。

また、施設によって待遇面も大きく変わってきます。昇給や退職金の有無、ボーナスの金額、残業代の支払い基準などが大きく変わってきます。長く勤めるのであれば待遇面でもいい施設に勤めることが重要です。

我慢してブラック施設で働き続ける必要はありません。身体や精神を壊す前に自分に合った施設に転職しましょう。

参考サイト