介護士をしていれば一回ぐらい「介護の仕事を辞めたい」と考える人は少なくないと思います。この記事では介護の仕事を辞めたいと感じた時に確認すべきポイントやおススメの業種などについて解説します。
1.介護職を辞めたい主な理由
介護職は、今後の社会において欠かせない仕事の一つです。「人のためになる仕事がしたい!」と希望を抱いて、この業界に飛び込む方は多いでしょう。
しかし、実際に介護職で働いた結果、「介護の仕事を辞めたい…」と感じてしまう方が現実には少なくありません。
まずは、その理由についてチェックしてみましょう。耳にする機会の多い理由11項目をご紹介します。
1.1 人間関係
介護の現場では、人間関係に悩んでストレスを抱えてしまうケースが決して珍しくはありません。
日々のストレスに耐えきれなくなり、退職という道を選ぶ介護職員が多いという実情があります。
介護の現場では介護職員だけではなく、看護師やリハビリスタッフたちが連携して仕事にあたるため、さまざまな立場の人が協力して仕事をする中で、うまくコミュニケーションを取れないケースもあるでしょう。
また、激務が原因で余裕を失くし、人間関係がギスギスしてしまう職場もあります。何か悩みを抱えていても、周囲の人に相談しづらいという雰囲気があるでしょう。
1.2 給料が低い
厚生労働省が実施した「令和3年度介護従事者処遇状況等調査」によると、介護従事者等の平均基本給額は「187,180円」(※1)。
実際には、これにさまざまな手当や一時金が加算されて月々の給与が決定されますが、「業務内容に見合わない」と感じる方は多いようです。
近年では、「介護職員等特定処遇改善加算」を取得し、職員給与の改善に努める施設が増えてきています。
実際に、令和2年度の介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額と比較すると、令和3年度のほうが7,780円増加という結果に(※2)。
徐々に状況は改善してきているものの、給与額の低さはまだまだ多い退職理由の一つと言えます。
1.3 体力的・精神的に仕事がきつい
介護の仕事は、体力的にも精神的にも、きつい内容が多いです。「もう耐えられない…」「自分には向いていない…」と感じて、辞めたい気持ちを募らせる方は少なくありません。
特に人手が足りていない現場では、スタッフ一人ひとりにかかる負担が重くなりがちです。責任感が強く、真面目なタイプに多い理由と言えるでしょう。
1.4 施設や事業所の経営方針に合わない
介護施設や事業所には、それぞれの経営方針があります。勤務するスタッフは、その方針に沿って利用者さんのお世話をしますが、残念ながら自身の考えとかけ離れているケースも。
この場合、自身の信念に背いたケアをすることになり、余計なストレスを抱えてしまうでしょう。
介護の仕事そのものにはやりがいを感じていても、施設や事業所への不満が募って退職してしまうパターンが多く見られます。
1.5 介護職に向いていない
介護の仕事は、人間を相手にするもの。基本的な仕事内容やケアの基礎知識は学んでいても、いつもそのとおりにいくわけではありません。
そのため、臨機応変なコミュニケーション能力や優れた体力、察する力やマネジメント能力など…、多方面のスキルが求められます。
介護職員として実際に働いていく中で、「自分はスキル不足である」「介護職には向いていなかった」という結論に至る方は少なくありません。
1.6 他の職場や仕事に興味がある
介護職に対するネガティブな感情ではなく、他業種へのポジティブな気持ちが転職の原動力となるパターンです。
介護の仕事をしてみたからこそ、保育の仕事や看護の仕事に興味が湧き、「そちらにチャレンジしてみたくなった!」というケースは多く見られます。
この場合、無理をして介護職を続けるよりも、転職について前向きに検討したほうが良いでしょう。しっかりと準備を整えつつ、次の仕事への道を探っていくことがおすすめです。
1.7 人手不足で忙しい
慢性的な人手不足に悩まされている介護業界。そのしわ寄せは、現場スタッフのもとに回ってきます。
人手が足りず、今いるスタッフがオーバーワークになったり、休日出勤やサービス残業が当たり前になったり…。
職場によっては、「お昼の休憩も満足に取れない」というケースもあります。時間に余裕のない職場環境においては、人間関係もギスギスしがちです。人手不足は、介護職を辞めたいと感じるきっかけの一つと言えるでしょう。
1.8 労働条件・環境が悪い
ひと言で「介護職」と言っても、その労働条件や環境は、施設によって大きく異なります。労働条件や労働環境に恵まれない職場に当たってしまうと、それを理由に退職したい気持ちが強まるでしょう。
具体的には、以下のようなケースが当てはまります。
- 新人に対する教育体制が不十分である。
- 職場全体の風通しが悪い。
- 誰か一人だけに責任を押し付ける傾向がある。
- ハラスメント行為が横行しており、解決する手段がない。
特に、入社して間もない新人介護職員の退職理由になりやすい項目です。
1.9 生活のリズムが悪くなる
介護職で給料を上げようと思うと、夜勤が必須です。各種手当を受けることで金銭面は潤いますが、生活のリズムを整えることは難しいでしょう。
若い時期には体力と気力でなんとかなっていても、年齢を重ねるごとに「厳しい…」と感じてくる方が多くなります。
また、家族や友人と生活時間が合わず、強い孤独感を抱いてしまう方もいます。
昼勤と夜勤がシフト制で繰り返される場合、そのリズムに体が慣れるまでには時間がかかるでしょう。慣れてきたころには昼夜逆転といった事態に陥りやすく、体力的な負担が大きくなりがちです。
1.10 現実と理想のギャップが大きい
「誰かのために働く」という介護の仕事に対して、夢や憧れを抱いて飛び込む方は少なくありません。しかし現実は、そう甘くはないでしょう。
「利用者さん一人ひとりと向き合って、丁寧な介護をしたい」と思って、介護職の仕事をスタートさせる方は多いもの。
しかし現実には、やらなくてはならない業務を決められた時間の中でこなすのに精いっぱい…という施設は少なくありません。
毎日必死で働きつつも、「自分はいったい何のために介護業界に入ったのか」という思いがよぎり、目標を見失ってしまう方もいます。
仕事に関する理想と現実のギャップは、何も介護職だけに限った問題ではありません。ただ「仕事とはそういうもの」と割り切れる部分がないと、どんな仕事でも続けていくのは難しいのでしょう。
1.11 ストレスを感じる
ここまでさまざまな辞めたい理由を紹介してきましたが、そのすべてはストレスにつながります。
お金のための仕事とはいえ、「できるだけストレスのない環境で働きたい…」と思う方は多いのではないでしょうか。
仕事内容、人間関係、職場環境、給与条件にやりがいなど…、さまざまなストレスを抱え、結果として「介護職を辞める」という決断に至る方は多いようです。
もちろん、介護職を「辞めたい」と感じる理由は、今回紹介した11項目だけではないでしょう。まずは自分自身としっかり向き合い、「なぜ辞めたいのか?」を明確にしておくことが重要です。
衝動的な理由で辞めてしまえば、後悔する可能性が高いでしょう。まずは冷静に、辞めたい理由をはっきりさせてください。
2.介護職を辞めたいときに確認するべきことは?
特に介護の仕事を始めたばかりの新人さんの場合、「介護職を辞めたい」という気持ちになることは珍しくありません。
もちろん誰にでも「職業を自由に選択できる権利」がありますから、仕事を辞めること自体はそれほど難しくはないでしょう。
ただし、忘れてはいけないのは「介護職を辞めて、本当に自分は満足できるのか?」という視点です。
「辞めたい」という気持ちが強くなったときほど、ぜひ以下の3つのポイントを確認してみてください。
自分自身が抱いている「辞めたい」という感情が整理でき、これから先どうするべきかを考えるヒントを得られるでしょう。
2.1 辞めたいのは今の職場か、それとも介護職なのかを確認する
肉体的にも精神的にも、負担が大きい介護の仕事。「もう無理だ…。辞めたい…」と感じてしまう人は、決して少なくありません。
しかし、ひと言で「介護職」と言っても、その雰囲気や仕事内容は職場によってさまざまです。だからこそ、まずは「自分が何を負担に感じているのか?」を、確認してみてください。
たとえば、次のようなことがありますか?
- 夜勤のワンマン・オペレーション状態がつらい。
- 職場の人間関係がギスギスしていて出社が憂鬱。
- 人手不足で負担が大きい。
- 施設と自分の考え方が合わず、つらい。
これらを理由に介護の仕事を辞めたいと思っている場合、問題があるのは「介護職」ではなく「職場」です。
今の職場を離れ、別の職場を見つけることで、問題なく介護の仕事を続けていける可能性は高いでしょう。
もちろん、自分自身の辞めたい理由を分析するのは簡単ではありません。さまざまな要因が絡まり合い、ひと言で説明するのが難しいケースもあるでしょう。
- いろいろと不満はあっても、介護の仕事そのものは嫌いじゃない。
- 将来のビジョンがあり、やりがいを感じられることもある。
このように感じられるのであれば、介護職を辞めるのではなく、業界内での転職によって問題を解決する道を探ってみるのがおすすめです。
2.2 なぜ向いていないと思うのかの確認
辞めたいのは「職場」ではなく、「介護職」そのもの。このように感じている方々の中には、「自分自身が介護職には向いていない」と感じている方が多いのではないでしょうか。
誰にでも、向き・不向きはあるものです。
とはいえ、何が自分に向いていて、何がどう向いていないのかを判断するのは、決して簡単ではありません。
だからこそ、なぜ向いていないと感じているのかを確認してみてください。
「責任が重い」「求められる役割が多すぎる」といった理由で「向いていない」と感じている場合、自分自身の能力ではなく、実は職場のほうに問題が隠されているケースが少なくありません。
自分を「介護に向いていない」と決めつけて、介護職そのものから遠ざかってしまうのは、あまりにもったいないことだと言えるでしょう。
一方で、次のように感じていると、職場を変えるだけでは問題を解決できない可能性が高いです。
- 体力的にどうしてもキツイ。
- 潔癖症で、人のお世話をすることに抵抗がある。
- 人とコミュニケーションをとるのが苦手で、苦痛に感じている。
このような場合は「介護の仕事に向いていない」と判断し、別の仕事を探してみると良いでしょう。
2.3 辞めたほうがいい職場、危ない施設とは
介護の仕事を辞めたいと思ったときには、ぜひその職場の環境に注目してみてください。
長らく人手不足が叫ばれている介護業界。少しずつ状況は改善してきているものの、いまだに「風通しの悪い職場」や「介護職員にとって危険な職場」は存在しています。
もしも今の職場が、以下の条件に当てはまっているのであれば、すぐにでも転職を検討してください。
- 違法な医療行為が行われている。
- 看護師のミスを介護士のせいにされてしまう。
- サービス残業や休日出勤が当たり前になっている。
- 職員間でのパワハラやセクハラが横行している。
- 経営者の姿勢が利益最優先で、現場に対する理解がない。
残念ながら、こうした職場環境を個人で変えることは難しいでしょう。いつ事故が起きるかわからない、非常に危険な職場とも言えます。
介護の仕事の良いところは、「転職先探しで困る」という恐れが少ない点です。積極的に転職を検討してみてはいかがでしょうか。
3.介護職を辞めたほうがいい人の特徴は
介護業界内での転職ではなく、介護職からきっぱりと足を洗い、他業種への転職を検討する方もいるでしょう。
とはいえ、未経験の業界への転職にはリスクが伴います。「本当に自分は介護職を辞めてもいいのだろうか…」と悩んだときには、以下の2つの特徴に注目してみてください。
介護職を辞めたほうがいい人、介護職を辞めてもデメリットが少ないと思われる人の特徴をご紹介します。
3.1 すぐに辞めてもいい人とは
まずは、介護職をすぐに辞めても大丈夫な人について解説します。ここでポイントになるのは、「介護職を辞めたあとに、どうするのか? 何ができるのか?」という点です。
まず、介護職以外にも資格を持っている人は、今の仕事に固執する必要はないでしょう。「介護職にやりがいを感じられない」「体力的にしんどい」などの辞めたい理由があれば、心のままに行動しましょう。
別の資格を活かしたほうが、毎日を生き生きと働ける可能性が高いです。資格を保有している業界に的を絞って転職活動をすれば、スムーズに話を進めていけるのではないでしょうか。
また、特別な資格を保有していなくても「若い」というだけで武器になります。転職市場において一定の需要が、まだどこの企業にも染まっていない若年層には期待できるでしょう。若ければ、もしもこれから何か別の資格が必要になったとしても、一から取得を目指せるだけの時間的余裕があるはずです。未経験からの転職であっても比較的受け入れてもらいやすいのも、若年層ならではの特徴と言えます。
「本当に自分は介護職で生きていけるのかどうか…」と悩み続け、なんとなくダラダラと仕事を続けていくよりも、思い切って転職したほうが良い結果を残せる可能性は高いでしょう。
3.2 すぐに辞めるメリットが少ない人とは
介護職で「辞めたい」と思ってしまうタイミングは、仕事を始めてすぐの時期が多いもの。
とはいえ、仕事を始めてすぐの時期は、すぐに辞めるメリットが少ないと言えます。
十分な業務経験がないまま、すぐに仕事を辞めてしまえば、その後の転職活動が不利になってしまう可能性もあるでしょう。
過去に何度も転職を繰り返している人は、特に注意してください。介護職からもすぐに撤退してしまうことで、以下のようなイメージを抱かれてしまう恐れがあります。
- こらえ性のない人
- どんな仕事も続かない人
介護職をすぐに辞めたいと思っても、現実的に考えれば、「次の仕事が決まらなければ困る…」という方が多いのではないでしょうか。残念ですが、上の条件に当てはまる人材を、積極的に雇おうと考える企業は少ないもの。転職活動で苦労する可能性は高いと思われます。
すぐに辞めるメリットが少ないのですから、一定の職歴として評価してもらえるまで、がんばることをおすすめします。
反対に、すぐに辞めるメリットのほうが、デメリットよりも大きいと思われる場合には、「介護職を辞めてもいい」と言えるでしょう。介護職を辞めるメリットとデメリットについては、次章で詳しく解説していきます。
4.介護職を辞めるメリットとデメリット
「介護の仕事を辞めたい」と思うときには、「すぐにでも辞職を申し出たい!」という気持ちでいっぱいになっている方が多いのではないでしょうか。
介護職がつらいと感じている方にとって、もちろん辞めるメリットは多々あるでしょう。しかし実際には、介護職を辞めるデメリットも少なくありません。
「辞めたい」という気持ちが強くなったときほど、自分にとっての辞めるメリットとデメリットについて確認してみてください。
それぞれの例は以下のとおりです。
4.1 介護職を辞めるメリット5つ
まずはメリットについて見ていきましょう。介護職を辞めるメリットは、主に以下の5つです。
- 精神的ストレスから解放される。
- 不規則な生活から抜け出せる。
- 肉体的な負担が軽減される。
- プライベートを充実させられる。
- 転職活動のスケジュールが組みやすくなる。
介護の仕事には、精神的および肉体的な負担が付き物です。これらから解放されるだけでも、「退職して楽になった!」と感じる方は多いでしょう。
また、夜勤や休日出勤、残業などがなくなれば、プライベートを充実させられます。慢性的な人手不足で激務となっている介護施設で働く人にとっては、「理想の生活」と言えるのかもしれません。
また、「介護の仕事を辞めて、別の業界に転職したい」と思っていても、介護業界独特の勤務形態から、「面接のスケジュールが組みにくく、思うようには転職活動が進められない」と悩む方がいます。
介護の仕事を辞めたあとなら、自分の好きなようにスケジュールを組み、納得いくまで転職活動に取り組めるでしょう。
4.2 介護職を辞めるデメリット3つ
一方で、忘れてはいけないのが介護職を辞めるデメリットについてです。辞めたい気持ちでいっぱいになっているときには、つい忘れがちな視点だからこそ、ぜひ冷静にチェックしてみてください。
3つのポイントをご紹介します。
- 安定した仕事を失う。
- 今後の待遇改善の恩恵を受けられなくなる。
- 次の仕事がうまくいくとは限らない。
少子高齢化が進む日本において、介護従事者のニーズは年々上昇しています。慢性的な人手不足は介護業界が抱えている大きな問題の一つですが、働き手の目線で言い換えれば、「売り手市場で、働く場所に困らない」ということです。
確かに介護の仕事は大変ですが、次のようなメリットがあるのも事実です。
- 自分のライフスタイルに合わせた働き方が選択できる。
- 自宅の近くで職場を探せる。
- 転職先に困らないため、いざとなればいつでも職場を変えられる。
介護職から離れて別の仕事を探す場合、また別の視点で何かを犠牲にしなければならない可能性もあるでしょう。
また、介護のニーズが高まる中、介護の仕事に携わる人々の待遇改善に向けた取り組みが進んできています。介護職から離れてしまえば、その恩恵を受ける機会はなくなってしまうでしょう。
さらに、介護職を離れて別の仕事に就いたからといって、その仕事がうまくいくとは限りません。安定を捨て、一定のリスクを負わなければならない点も、介護職を辞めるデメリットと言えます。
5.介護職を続けるメリットとデメリット
一方で、「介護職を続ける」と決断した場合のメリットとデメリットは、どこにあるのでしょうか?こちらも詳しくチェックしてみましょう。
まずはメリットからお伝えします。
5.1 介護職を続けるメリット
今はしんどいと感じる機会が多くても、介護職を続けるメリットは決して少なくありません。具体的には、以下のポイントを参考にしてみてください。
- 日本全国どこへ行っても、働く場所探しで困る恐れがない。
- キャリアアップして収入を上げられる可能性が高い。
- 身近な人に介護が必要になったとき、自身の経験を活かせる。
- 定年後の働き口も確保しやすい。
今後も一定の需要を見込める介護職。だからこそ、その現場での経験は、今後の仕事人生の糧となるはずです。キャリアを積み重ねていけば、日本全国どこへ行っても就職先探しに困ることはないでしょう。
また、資格取得や実務経験の積み重ねによって、着実な収入アップも目指していけます。仕事の幅を広げることで、「体力勝負」だけではない、介護の仕事の奥深さを感じられるようにもなるでしょう。
さらに、介護スキルは職場以外でも活かせるスキルです。自分自身や身近な人の「将来」を考えたときに、高齢になってから役立つ適切な知識や技術を身につけられる点も、非常に大きなメリットと言えます。
このように、介護の仕事を続けるメリットは決して少なくありません。辞めたい気持ちが募ったときほど、ぜひメリットに注目してみてください。
5.2 介護職を続けるデメリット
一方で、介護職を続けることにはもちろんデメリットもあります。こちらにもしっかりと目を向けて、本当に介護職を続けていくのかどうかを判断しましょう。
- 心のバランスを崩してしまう可能性がある。
- 激務によって体を壊してしまう可能性がある。
- 転職のタイミングを逃してしまう。
すでに辞めたい気持ちが大きくなっている場合、介護職を続けることは、決して簡単ではありません。「辞めたくても辞められないから…」というネガティブな理由で、無理をして働き続けた場合、心や体に異変が生じてしまう可能性があります。精神的・肉体的に無理が重なれば、回復するまでに長い時間がかかってしまう恐れもあるでしょう。
また、他業種に未経験でも転職したいと思っている場合には、タイミングが重要です。未経験での転職は、若いうちのほうが圧倒的に有利。
やりがいを持てないまま、だらだらと介護職を続けた結果、本当の自分の希望がかなえられなくなってしまう可能性があるでしょう。こちらも大きなデメリットだと言えます。
6.介護職を辞めるタイミングと準備
ここからは、「介護職を辞める」と決めた方に役立つ情報をお届けします。「よし、辞めよう!」と決めたら、どのタイミングでどういった準備を整えていくべきなのでしょうか。
まず、介護の仕事を辞めるタイミングについてですが、以下の2つのポイントを意識してみてください。
- 当座の生活費が確保できてから
- ボーナスをもらったあと
介護職に限らず、仕事を辞める際に重要なのは「たとえすぐに転職先が見つからなかったとしても、ある程度は生活していけるかどうか」という視点です。十分な貯蓄がないまま見切り発車で退職しては、生活に困るかもしれません。「生活費のため、気に入らない会社への転職で妥協せざるをえなかった…」なんて事態にもなりかねないでしょう。最低でも3カ月分の生活費を貯蓄として確保できてから、辞めることをおすすめします。
もう一点、自分自身が損をしないために意識したいのが、ボーナスのタイミングです。ボーナスとは、過去数ヶ月がんばってきたことへの評価の証です。
「ボーナスをもらってすぐに辞めるのは気まずいから」という理由で、ボーナス時期前に辞める必要はありません。過去の自分の努力に対する対価はしっかりと受け取ったうえで、気持ちよく退社しましょう。
続いて、介護職を辞めるための準備として、意識したいポイントをご紹介します。
- 介護職の経験と実績を積む。
- 次の仕事で役立つスキルを身につける。
- 転職先を見つける。
- 引き継ぎをしっかりと行う。
「介護職から離れると決めたら、今の介護の仕事に対するモチベーションがなくなってしまった…」という方は少なくありません。介護の仕事を続けないのであれば、努力する意味を感じられないと思う場面もあるでしょう。しかし、どんな分野に転職する場合でも、過去の仕事で積んだ経験や実績は意味があります。
たとえば介護職の場合、日常的に次のようなさまざまな「仕事」を行っているはずです。
・チームワークを大切にして仕事をする。
・現場のリーダーとして周囲を引っ張る。
・相手とのコミュニケーションの中でニーズを引き出す。
介護職で自分が意識してがんばったことは、転職活動時のアピール要素として使えるでしょう。
また、退職前から転職活動をスタートすれば、金銭面での不安を軽減できるはず。転職先をなかなか見つけられない場合には、スキルを身につけるための勉強をしたり、資格を取得したりすることが転職に効果的です。
最後に、自分自身が介護職から離れるからこそ、引き継ぎはしっかりと行ってください。「とにかく辞められればいいから」と思って勝手な振る舞いをすると、後任のスタッフや利用者さんが迷惑する可能性も。
もし自分だけが把握しているという情報があるなら、あとでチェックできるよう、ノートにまとめておくといいでしょう。「立つ鳥あとを濁さず」を念頭に置いて、しっかりと準備を整えてください。
7.介護職からの転職でおすすめの業種
介護職を辞めたあとに何の仕事をすればいいのかと、悩む方は多いのではないでしょうか。介護職から離れるとはいえ、そこで得た経験のすべてを無駄にする必要はありません。過去の仕事での経験を活かせる、おすすめ業種5つをご紹介します。
7.1 保育士
介護職と仕事内容が似ている保育の仕事は、介護職からの転職におすすめの業種です。「お世話をするのが子どもに変わるだけ」と思いがちですが、保育士の場合、基本的に夜勤はありません。勤務は昼間のみで、生活を安定させやすいという特徴があります。
保育士として勤務するためには専門の資格が必要ですが、介護福祉士の資格を有していれば一部科目が免除されます。比較的楽に取得できるのではないでしょうか。
また、資格取得が間に合わない場合、保育士の仕事をサポートする保育補助の仕事に就くのもおすすめです。介護の仕事とは違った部分で、やりがいを感じられるでしょう。
7.2 営業職
人とのコミュニケーションのもと、自社のサービスや商品を売り込むのが営業職の特徴です。
介護職では、利用者さんだけではなく、そのご家族ともコミュニケーションが必須でしたので、そこで身につけた「わかりやすく説明する力」や「新たな計画を提案する力」を、存分に発揮できるでしょう。
営業職の場合、介護職とは違い、自身の成果が数字となって現れます。仕事に対して、わかりやすい成果ややりがいを求める方にはおすすめです。
ひと言で営業職と言っても、扱うサービスや商品はさまざまです。介護関連商品を扱う会社の営業職なら、過去のスキルをより活かせるでしょう。
7.3 事務職
介護の仕事は肉体的につらい…という方におすすめなのが、事務職です。事務職の仕事は基本的にデスクワークですので、体を酷使する恐れはありません。
勤務時間も「9時から5時」などと、はっきり決められているケースが多いため、プライベートを充実させられるでしょう。
介護業界で培った経験を活かしたいのであれば、同じ事務職でも「介護事務」の仕事を探すのがおすすめです。介護報酬請求や介護手続きなどの、より幅広い知識を新たに身につける必要はありますが、仕事の負担は少なくなります。
「コミュニケーションが苦手だから介護職を辞めたい」と思っている方におすすめの転職先です。ただ、競争率が高い職種ですので、事前に資格を取得しておくことをおすすめします。
7.4 看護職
看護の仕事も介護職と共通点が多いことで知られています。介護職からのスキルアップで、看護師を目指す方は少なくありません。看護師として転職先を探すためには、まず国家資格の取得を目指しましょう。
看護師の資格がない場合、まずは看護助手として働くのもおすすめ。患者さんの基本的なお世話や看護師のサポートが主な任務です。
7.5 接客業
「介護職は続けられないけれど、人と関わるのは好き」という方には、接客業がおすすめです。介護の現場で育成したコミュニケーション力を存分に活かせるでしょう。
接客業の仕事の幅は広く、また求人数が多い点も魅力の一つです。介護業界同様に人手不足が問題視されているため、未経験からでも飛び込みやすい業界と言えます。
介護職経験を活かしたいなら、高齢者向けの商品やサービスに特化したお店を選択するのもおすすめです。転職活動でも、過去の仕事をアピールしやすくなるでしょう。
8.辞めたい。でも介護職は続けたい場合の転職
「今の仕事は辞めたいけれど、介護の仕事は嫌いじゃない」という悩みを抱えている方は、決して少なくありません。介護の仕事に対する思い入れがある分、転職先探しで悩みがちです。このような場合は、ぜひ介護業界内での転職について検討してみてください。
介護の仕事に対して、次のようなネガティブなイメージを抱く方はまだまだ多いものです。
・給料が少ない。
・仕事が激務。
・責任が重い。
・プライベートを犠牲にしなければならない。
しかし実際には、介護業界全体がこのような問題を抱えているわけではありません。「業界」ではなく、「今勤めている職場特有の問題」である可能性が十分にあるのです。職場環境や働き方が変わると、自分自身の心や体、そして時間の使い方にも大きな変化が生まれます。わざわざ介護業界から離れなくても、自分の理想とする働き方を追求していけるのではないでしょうか。
「夜勤がつらいから介護職を辞めたい」と思う方は、デイサービスに転職しましょう。通所介護事業所なら、そもそも「夜勤」という概念はありません。利用者が帰宅すれば1日の仕事は終わりますから、生活が不規則になる恐れもないでしょう。
「職員同士の人間関係がつらい…」という方には、できるだけ多くの人が働いている、大型施設を選択することをおすすめします。多くの人がシフト制で働いているため、人間関係が固定化しづらく、トラブルの発生するリスクが少なくなります。また、人数が多ければ、何か問題が生じた場合の配置転換に対応してもらいやすいでしょう。
「スタッフに対して利用者の数が多すぎて、しんどい」という方は、訪問介護の仕事に注目してみてはいかがでしょうか。利用者さんの自宅で身体介助や生活援助を行うため、一人ひとりとじっくり向き合えるというメリットがあります。さらに、時間の融通が利きやすく、プライベートと両立しやすいでしょう。
このほかにも、福利厚生が充実した介護施設や、好待遇を約束している職場は少なくありません。「介護職=今の職場」と考えて視野を狭めるのではなく、ぜひさまざまな職場の情報をチェックしてみてください。
9.後悔しない転職をするためのポイント
安定した介護職を捨てて転職活動をするなら、後悔の残らない行動を心掛けたいもの。ただなんとなく転職すると、あとになって「こんなはずじゃなかった…」と思ってしまう可能性があるでしょう。
後悔しない転職をするために、ぜひ以下の3つのポイントを意識してみてください。
9.1 転職の目的を明確にする
まずはっきりさせなければならないのが、「転職する目的」についてです。なぜ自分は転職するのかを、明らかにしてみてください。
転職活動を行っても、すぐに転職先が決まるとは限りません。さまざまな企業を受け、内定をもらったり落ちたりしている間に、自身の目的を見失ってしまうケースは少なくないのです。
たとえば、「今の職場では給料が不満」という場合には、「最低いくらぐらいほしいのか?」を明確にしましょう。自身の希望が明らかになれば、「最低でも月給○○円以上の企業に転職する」という目標も明らかになります。
転職理由として多く見られるのが「人間関係の悪化」ですが、ふんわりした内容の理由だからこそ、目的を明確にしておく必要があります。今の職場の人間関係のどんなところが嫌なのかをしっかり見つめ直し、それを解決できる職場への転職を目標にしましょう。
転職の目的さえ見失わなければ、転職後の不満は最小限になるはずです。「介護の仕事辞めたいな…」とぼんやり考え始めたら、まずはこのステップからスタートしてみてください。
9.2 希望条件を絞る
せっかく転職するのですから、さまざまな希望を抱く方は多いでしょう。給料や待遇、勤務時間に勤務地など…、希望条件を挙げればキリがありません。
もちろん、すべて備えた理想の職場を見つけられればいいのですが、残念ながら難しいでしょう。
「後悔したくないから」という思いで希望条件を広げ過ぎると、転職先が見つからないまま、ただ時間だけが過ぎていってしまう可能性も。希望を持つのは良いことです。
ただ一方で、ある程度、本当に譲れないという条件を絞り込んでおくことも大切でしょう。
9.3 希望条件の優先順位など
希望条件を絞り込んだら、次は優先順位を決めておきましょう。
- 絶対に譲れない条件
- できれば譲りたくない条件
- 状況しだいでは譲ってもいい条件
希望条件をこれら3つに分類しておくと、転職先選びで悩む可能性は少なくなります。
優先順位を決めたら、それを転職活動に反映させていきましょう。まずは「絶対に譲れない条件」をもとに、転職先候補を洗い出します。その中から、「できれば譲りたくない条件」「状況しだいでは譲ってもいい条件」をチェックしていけばOKです。
希望条件に優先順位を設定しておけば、以下のような場面でも役立つはずです。
- 2つの会社から内定をもらって、双方にメリットとデメリットがある。
- 一部を妥協してまで、この会社に入るべきかどうか悩んでいる。
何をどう選択すれば後悔しないのかが、把握しやすくなるでしょう。
まとめ
「介護職を辞めたい!」と思ったらまずは冷静に
介護職を辞めたいと思ったとき、本当に辞めていいのか、どう行動するべきか、悩む方は多いのではないでしょうか?
まずは冷静に、今回ご紹介したポイントをチェックしてみてください。介護職そのものを辞めなくても、業界内での転職によって問題を解決できる可能性も。
また、転職する目的さえ明らかになっていれば、あとあと後悔するリスクは少なくなるでしょう。
介護の仕事から転職する場合にも、今のまま継続する場合にも、メリットとデメリットの両方があります。
仕事は人生そのものと深く関わっているものですから、どちらも無視するのは危険です。大切なのは、「世間一般ではどうなのか」よりも、「自分の場合はどうなのか」という視点です。
今回ご紹介した情報を参考にしながら、今後のキャリアプランについて、ぜひ慎重にチェックしてみてください。