介護の仕事は資格があるとさらに有利! 介護系資格の種類と難易度は? 取得メリットから上位資格まで幅広く解説

介護の仕事は資格があるとさらに有利です。 介護系資格の種類と難易度や取得メリット、上位資格まで幅広く解説します。

1.介護の資格を持っていなくても働けるのか

「介護の仕事をしたい!」と思ったときに、気になるのが各種資格の必要性についてです。資格があったほうが有利と予想はしていても、右も左もわからない状況から取得を目指すのは、決して簡単ではありません。

また、ひと言で「介護の資格」と言っても、その種類はさまざまです。「まずは仕事をスタートさせてみなければ、本当に自分に必要な資格がどれかわからない」と感じる方が多いのではないでしょうか。

ここで気になるのが、「そもそも介護職とは、介護系資格を保有していなくても働けるのか?」という点です。結論からお伝えすると、介護職は資格なしの状態からでもスタート可能です。介護系求人をチェックしてみれば、「無資格・未経験OK」の施設が多いことに気付くでしょう。

とはいえ、無資格者が有資格者と同じ仕事をこなせるわけはありません。無資格者の主な仕事内容は、利用者さんの生活援助です。食事の支度や掃除、洗濯、買い物といった作業は、特別なスキルを必要としないため、無資格者でも担当できます。また、介護施設内で働く場合、身体介助を行う有資格者のサポートも重要な仕事です。職場によっては、介護助手や介護補助といった名称で呼ばれているケースがあります。

ただ、実際に無資格で介護業界に飛び込んでみると、「資格があったほうが圧倒的に有利」と感じるでしょう。担当できる仕事の幅が広がるのはもちろん、保有資格に応じて、給料に差を設ける施設がほとんどだからです。また、今の施設を出て別の職場を探す際にも、有資格者のほうが有利に。より良い条件の職場を選びやすくなるでしょう。

介護業界には、未経験・無資格から飛び込んできた方も多く活躍中です。実際に働きつつ、キャリアアップを目指して資格を取得する方が少なくありません。介護系の資格の中には、受験資格に「実務経験」が含まれるものがあります。現場で経験を積みながら資格取得を目指すのは、理にかなった方法と言えるでしょう。

2.介護資格を取得する際の注意点

介護資格取得を目指す際には、まず自分が目指す資格を明らかにする必要があるでしょう。どの資格を目指せるのかは、受験要件や難易度によって変わってきます。人気の介護資格について、要件や難易度をまとめます。

2.1 資格を取得するための要件

まずは資格を取得するための要件についてです。初心者向けの資格から順にご紹介します。

【介護職員初任者研修】

  • 特別な要件はなし(※未経験であっても誰でも受講可能)。
  • スクールにて専用カリキュラムを受講し、修了すれば資格を取得できる。

【介護福祉士実務者研修】

  • 特別な要件はなし(※未経験であっても初任者研修未受講であっても、誰でも受講可能)。
  • スクールにて実務者研修課程を修了すると資格を取得できる。

【介護福祉士】

  • 「福祉系学校で学ぶ」「養成施設に通う」「3年以上の実務経験」のいずれかの条件を満たしていること。
  • 介護福祉士国家試験に合格すれば資格を取得できる。

介護職員初任者研修と介護福祉士実務者研修は、どちらも未経験から取得を目指せます。スクールのカリキュラムをこなせば資格が付与されるので、介護業界の基本を学ぶのにぴったりな内容と言えるでしょう。

介護福祉士は、介護系資格の中で唯一の国家資格です。上の2つと比較すると受験要件は厳しく設定されていますが、福祉系の高校に通えば、卒業と同時に国家試験の受験資格が得られます。「子どもの頃から介護職に就くと決めていた」と言う方にとっては、こちらが介護福祉士資格を取得するための最短ルートと言えるでしょう。

また、厚生労働大臣が指定する指定養成施設を卒業し、その後に国家試験を受験する方法もあります。養成施設に入学するためには、高卒程度以上の学歴が必要。養成施設に通う期間は通常2年ですが、過去に福祉系大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設を卒業していれば、通学期間を1年にまで短縮できます。

無資格から介護業界で働き始め、「いずれは介護福祉士の資格を目指したい…」という場合には、3年以上(従事日数540日以上)の実務経験を積みましょう。また、この場合、過去に介護福祉士実務者研修を修了していることも条件となります。介護福祉士については受験要件が複雑ですから、いつまでに資格を取得したいのかをハッキリさせたうえで、計画的に取り組みを進めていきましょう。

2.2 難易度や合格率

介護系資格を目指すうえで気になるのが、その難易度についてです。今回ご紹介した3つの中で、最も難易度が低いのは介護職員初任者研修です。この研修で学ぶ内容は、介護業界で働くために必要な、ごく基礎的なポイントについてです。
講座修了後に確認テストが行われ、この点数によって合否が判定されます。合格率は公表されていませんが、授業をきちんと聞いてさえいれば、決して難しい内容ではありません。合格率は100%に近いと予想されています。

一方で、介護福祉士実務者研修の場合、難易度はやや上がります。介護職員初任者研修と同様、無資格・初心者でも受講できますが、授業は「基礎知識をすでに学んでいる人」向けに展開されます。初心者研修を飛ばして実務者研修からスタートした場合、基本の部分を自分自身で習得するよう、一定の努力が必要となるでしょう。ただし、実務者研修の場合、講座修了後の試験は義務付けられていません。特に試験を受ける必要はなく、講座終了とともに、自動的に資格が付与されるスクールが少なくないようです。また、一定の試験を課しているスクールにおいても、点数が足りなければ追試対応が可能。受講生が途中で投げ出すことさえしなければ、ほぼ100%の確率で合格できると言えるでしょう。

国家資格である介護福祉士は、上の2つに比べて難易度が上昇。年に1度行われる試験の合格率は、毎回約7割程度です。筆記試験に出題される科目は、次の11科目と、非常に幅広くなっています。

  • 人間の尊厳と自立
  • 人間関係とコミュニケーション
  • 社会の理解
  • 介護の基本
  • コミュニケーション技術
  • 生活支援技術
  • 介護過程
  • こころとからだのしくみ
  • 発達と老化の理解
  • 認知症の理解
  • 障害の理解
  • 医療的ケア
  • 総合問題

また、実技試験では、介護などに関する専門的技能もチェックされるでしょう。試験内容はそれほど難しくはありませんが、「問題の総得点の60%程度」を獲得する必要があります。さらに、11科目中に得点のない科目があった場合、「総得点の60%程度」をクリアしていても不合格になります。11科目をまんべんなく得点できるように勉強する必要があるでしょう。

3.介護関係の資格を取得するメリット

介護系の資格を取得するためには、「スクールでの専用講座の受講」など、時間もお金もかかるケースがほとんどです。無資格でもとりあえず働けていれば、「わざわざ手間をかけて資格を取得しなくても、今のままで良いのでは?」と考える方がいるかもしれません。

とはいえ、介護関係の資格を取得しておくメリットはさまざまです。6つのメリットをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

3.1 転職・就職に有利

介護業界で転職や就職をするなら、資格を取得しておいたほうが断然有利です。介護の資格は、一定の知識やスキルを身につけている証拠。資格に対する捉え方は施設によって異なりますが、「即戦力」として重宝される可能性が高いでしょう。

転職情報や就職情報をチェックしていると、「有資格者歓迎」の文字が目立ちます。自信を持って応募できる点も、資格保有者のメリットと言えるでしょう。

3.2 給与が上がる

介護業界で重宝される有資格者です。より多くの人材を集めるため、資格を有しているスタッフに対して、資格手当を支給する施設が少なくありません。介護従事者にとって、資格取得は給与アップのための最短ルートと言えるでしょう。

ただし、介護の資格で実際に給料がアップするかどうかは、勤務先によって異なります。また、「初任者研修は対象外、介護福祉士になると月1万円」など、資格の種類によって手当が付くか付かないかが決まっているケースもあるでしょう。

給与アップを目的に資格取得を目指す場合、勤務先にそうした制度があるかどうかを、事前に確認するのがおすすめです。ない場合には、そうした制度がある施設への転職を検討してみてください。

3.3 介護ケアへの理解が深まる

未経験・無資格からでもスタートできる介護の仕事ですが、資格取得を通じて基本的な知識とスキルを習得することで、介護ケアへの理解度がよりいっそう深まるでしょう。これまではただなんとなくこなしていた作業に対しても、しっかりとした意味を見出せるようになるはず。仕事の質の向上にも役立つはずです。

3.4 スキルアップ・キャリアアップできる

介護業界は、資格の取得によって着実なスキルアップやキャリアアップが見込める業界です。資格を取得すれば、担当できる仕事の範囲が広がるでしょう。生活相談員やケアマネジャーなど、自身が目指す方向に合わせたキャリアアップも可能です。

3.5 業務内容の幅が広がる

介護系資格を取得すると、業務内容の幅が広がります。無資格のときは「有資格者のサポートのみ」で、単調な作業になりがちです。資格を保有してキャリアアップすれば、直接的なケアはもちろん、精神的なケアや介護計画の立案など、さまざまな業務を担当できるでしょう。モチベーションを維持しやすくなるほか、介護の現場で自分に合った仕事を探しやすくなります。

3.6 家族の介護に活かせる

今は大丈夫でも、いずれは家族に、介護が必要になるときがやってくるかもしれません。介護系の資格を保有し、事前に基礎的な知識と技術を身につけておけば、家族の介護にも自信を持って取り組めるでしょう。支援が必要なとき、どうすればいいのか、自分たちに何がどこまでできるのかなどと、悩んだり戸惑ったりするリスクが少なくなります。

4.介護の主な資格は3種類

先ほどもお伝えしたとおり、介護業界で知名度の高い資格は以下の3つです。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護福祉士

それぞれの内容や特徴について、わかりやすく解説します。

4.1 介護職員初任者研修

介護職員初任者研修は、「介護に必要な基本的な知識とスキルを身につけている」という事実を証明するための資格です。この場合の「介護」とは、主に「身体介護」を意味しています。

「無資格者の場合、身体介護は有資格者の監督のもとでのみ行える」というルールを設定している介護施設が少なくありません。介護職員初任者研修を終えれば、一人で身体介護の仕事ができますし、訪問介護の仕事に就くことも可能です。

以前は「ホームヘルパー2級」という名称で親しまれていました。2013年の制度変更により、介護職員初任者研修へと変更されています。

4.2 介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格です。また実務経験ルートでさらに上位の介護福祉士資格を目指す場合、避けては通れない資格でもあります。

実務者研修では、初任者研修よりも踏み込んだ内容について学べます。授業を通じて、介護に関する専門的な知識と実践的な技術を習得できるでしょう。質の高い介護サービスの提供につながります。

ちなみに、初任者研修と実務者研修には重複する内容が少なくありません。このため、過去に初任者研修を終えている人が実務者研修を受ける場合、受講を免除される科目があります。受講期間や費用を大幅に節約できるでしょう。

4.3 介護福祉士(国家資格)

介護福祉士とは、1人で日常生活を送ることが困難な人をサポートするための専門職です。介護福祉士になるためには、ただ単純に「知識」と「技能」があればいいというわけではありません。

スクールで学んだ知識や具体的な技能を現場で活かし、介護を必要とする人が、自分らしく生き生きと生活できるようにサポートすることが最大の目的となります。このため介護福祉士の仕事は、介護サービスの提供だけでなく、利用者さんの家族からの相談への対応やアドバイス、職員の指導など、幅広い分野にわたります。

介護福祉士資格を保有しているスタッフに対して、専用の資格手当を用意する施設は少なくありません。少子高齢化が進む今、今後もさらに注目度が高まる資格と言えるでしょう。介護系資格の取得を目指すのであれば、ぜひ「介護福祉士」を一つの目標にしてみてください。

5.介護の資格取得にかかる費用や期間

介護系の資格を取得するためには、いったいどれくらいの費用や期間がかかるのかを見ていきましょう。こちらも介護初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士の3資格について解説します。

5.1 介護職員初任者研修

介護職員初任者研修の資格は、専門の講座を提供しているスクールにて、決められたカリキュラムを受けることで取得できます。カリキュラム受講の合計時間数は130時間。

その内訳は以下のとおりです。

  • 職務の理解:6時間
  • 介護における尊厳の保持・自立支援:9時間
  • 介護の基本:6時間
  • 介護・福祉サービスの理解と医療との連携:9時間
  • 介護におけるコミュニケーション技術:6時間
  • 老化の理解:6時間
  • 認知症の理解:6時間
  • 障害の理解:3時間
  • こころとからだのしくみと生活支援技術:75時間
  • 振り返り:4時間

各カリキュラムでは、講義と演習が一体的に実施されます(※1)。

介護職員初任者研修の資格を取得できるスクールには、通学のみですべてのカリキュラムを修了するパターンと、通学と通信を組み合わせて修了するパターンがあります。資格取得までにかかる期間は、週に何度通学できるのかによって変わってくるでしょう。たとえば週に4~5日の通学が可能な場合、介護職員初任者研修の資格は約1カ月で取得可能になります。週に1日程度しか通学できない場合は、4カ月程度は見ておくといいでしょう。

費用の相場は3万~15万円と幅広いです。スクールによって異なるため、事前にしっかりとチェックしてみてください。「費用が安いほうに惹かれる!」という方は多いと思いますが、初任者研修を最後まで終えられなければ意味がありません。「欠席したときの振替制度」や「各種フォロー体制」など、費用以外の項目もチェックしつつ、総合的に判断するのがおすすめです。

5.2 介護福祉士実務者研修

介護職員初任者研修の上位資格である介護福祉士実務者研修。資格を取得するためのカリキュラムは、過去に何らかの介護系資格を取得しているかどうかで違ってくるでしょう。

5.2.1 無資格の場合

無資格の場合には、一から介護について学ぶことになります。
合計で450時間のカリキュラムをこなす必要があります。

  • 人間の尊厳と自立:5時間
  • 社会の理解Ⅰ:5時間
  • 社会の理解Ⅱ:30時間
  • 介護の基本Ⅰ:10時間
  • 介護の基本Ⅱ:20時間
  • コミュニケーション技術:20時間
  • 生活支援技術Ⅰ:20時間
  • 生活支援技術Ⅱ:30時間
  • 介護過程Ⅰ:20時間
  • 介護過程Ⅱ:25時間
  • 介護過程Ⅲ:45時間
  • 発達と老化の理解Ⅰ:10時間
  • 発達と老化の理解Ⅱ:20時間
  • 認知症の理解Ⅰ:10時間
  • 認知症の理解Ⅱ:20時間
  • 障害の理解Ⅰ:10時間
  • 障害の理解Ⅱ:20時間
  • こころとからだのしくみ:20時間
  • こころとからだのしくみⅡ:60時間
  • 医療的ケア:50時間(※2)

受講期間の目安は約6カ月。費用は14万~22万円程度が相場です。

5.2.2 資格ありの場合

過去に介護職員初任者研修の資格を取得している場合、合計9科目・130時間分のカリキュラムが免除されます。

  • 社会の理解Ⅱ:30時間
  • 介護の基本Ⅱ:20時間
  • コミュニケーション技術:20時間
  • 介護過程Ⅱ:25時間
  • 介護過程Ⅲ:45時間
  • 発達と老化の理解Ⅰ:10時間
  • 発達と老化の理解Ⅱ:20時間
  • 認知症の理解Ⅱ:20時間
  • 障害の理解Ⅱ:20時間
  • こころとからだのしくみⅡ:60時間
  • 医療的ケア:50時間(※2)

資格取得までにかかる期間は約4カ月で、受講料の目安は10万~15万円程度です。

【ヘルパー1級の資格を有する場合】

制度改正前にヘルパー1級を取得している場合、実務者研修のカリキュラムはさらに大幅に免除されます。受講が必要なのは次の2科目・95時間のみです。

  • 介護過程Ⅲ:45時間
  • 医療的ケア:50時間 (※2)

資格取得までにかかる期間は1~2カ月程度で、受講料の目安は約7万~10万円です。

5.3 介護福祉士

介護福祉士の資格を取るためには、まず受験資格を満たさなくてはいけません。「福祉系の高等学校に通う」「高校卒業後に養成施設に入学する」「3年以上の実務経験を積み、介護福祉士実務者研修を受講する」のいずれかをクリアしてください。こちらの条件を満たすためには、最低でも3年の時間が必要です。

介護福祉士の資格を取得するためには、以下のような費用がかかります。

  • 国家試験の受験費用
  • 登録費用と手数料
  • 学費(※福祉系高校・養成施設ルートを選んだ場合)
  • 介護福祉士実務者研修受講費用(※実務経験ルートを選んだ場合)

令和5(2023)年に行われる介護福祉士国家試験の受験費用は、18,380円です(※3)。試験に合格したら、登録費用として9,000円と、その手数料として3,320円が必要になります。

福祉系高校や養成施設ルートで介護士資格取得を目指す場合、学費として100万~150万円が発生します。一方で実務経験ルートの場合、学費の代わりに介護福祉士実務者研修の受講費用として14万~22万円程度が必要です。

6.介護福祉士取得者におすすめの資格

介護系資格には、上記3つ以外にもさまざまな種類があります。「介護福祉士の資格を取得するまでが一つのヤマ」と感じる方が多いですが、実際に取得できたら、さらなるステップアップを目指すのもおすすめです。

介護福祉士を取得した方におすすめの資格は、以下の3つです。

6.1 認定介護福祉士

民間資格とはなりますが、介護福祉士の上位資格です。資格を取得するためには、介護福祉士を取得後5年以上の実務経験が求められます。介護の現場では、さまざまな利用者さんと出会うことになります。介護福祉士よりも、さらに多様な事例に対応できるだけの知識やスキル、そして介護職員への指導スキルや実践力を証明する資格です。

6.2 喀痰吸引等研修

こちらは、喀痰吸引や経管栄養のケアができる介護職員を育てるための研修です。基本研修と実地研修を修了することで、資格が付与されます。医師や看護師との連携のもとで、利用者さんの痰の吸引や経管栄養を与える業務にあたれます。

6.3 介護支援専門員(ケアマネジャー)

「ケアマネ」とも呼ばれる介護支援専門員は、介護を必要とする人のため、その状況に応じたケアプランを作成します。介護保険制度に基づいて介護施設に必置されるケアマネは、介護福祉士からのキャリアアップ先としても人気の職種です。利用者さんや家族との関わりを深め、介護サービスを受けるための「コーディネーター」のような役割を果たします。資格取得のためには、介護福祉士などの国家資格取得後5年以上の実務経験が求められますが、収入アップにも役立つでしょう。

7.認知症に関係する資格

少子高齢化が進む今、認知症関連の資格も注目されてきています。介護業界で活躍の幅を広げるために、ぜひこちらもチェックしてみてください。

7.1 認知症介護基礎研修

認知症を患う患者さんに関する、基礎的な知識を学べる研修です。認知症に関する知識を深めるとともに、必要なケアについて学べるでしょう。認知症患者への対応方法など、すぐに活用できる知識と技術を身につけられます。介護施設に勤務している人が対象です。

7.2 認知症介護実践者研修

介護施設に2年以上勤務している人を対象に行われる研修です。基礎研修よりも、さらに踏み込んだ知識や技術が学べます。認知症の方はもちろん、その家族にまで目を向けて、認知症の方が日常生活を安心して送れるようにケアするための知識を身につけられるでしょう。

7.3 認知症介護実践リーダー研修

その名前のとおり、認知症の患者さんのケアに取り組む際の、リーダーを育てるための研修です。「認知症介護実践者研修を修了し1年以上」「実際にケアチームのリーダーを務めている」「介護の現場経験が5年以上かつリーダー候補である」といった条件をクリアした人のみが対象になります。認知症に関する知識をさらに深められるほか、チームマネジメントについても学べます。

7.4 認知症ケア専門士

平成17(2005)年に作られた、比較的新しい資格です。認知症ケアに対する知識や技術、倫理観を備えた専門技術士の養成を目的とした民間資格。認知症患者と直接コミュニケーションをとってケアする機会が、多い人におすすめです。認知症ケアに関する知識や技術を学べるでしょう。

8.その他介護関連の資格

その他にも、介護に関連した資格は数多く存在しています。「介護業界に興味はあるものの、自分に何ができるのか自信がない…」という方は意外と多いのではないでしょうか。次のような資格を保有していれば、介護業界内で働き方の幅が広がるでしょう。

8.1 重度訪問介護従業者

重度の肢体不自由者に対して、日常生活を送るうえで必要な介護サービスを提供するための資格です。受講資格は特になく、都道府県知事指定の「重度訪問介護従業者養成研修」を修了すれば資格が付与されます。基礎課程と追加過程があり、基礎課程を終えれば障害程度区分4・5の利用者への介護サービス提供が可能になります。追加課程を修了すれば、障害程度区分6の利用者のケアも担当できます。

8.2 福祉住環境コーディネーター

介護が必要な方や高齢者に対して、快適に暮らせる住空間を提案する専門職です。現在の住まいの状況はもちろん、利用者の心身機能も適切に評価します。それをもとに、福祉用具の導入や住宅改修についてアドバイスします。福祉や住環境、介護や医療、建築、福祉用具などの、幅広い知識を求められる試験に合格すると、この資格を得られます。

8.3 介護事務

介護施設などで、事務の仕事を担当するのに役立つ資格です。一般的な事務スキルや知識に加えて、介護業界特有の知識が求められます。無資格でも介護業界の事務職に就くことは可能ですが、介護事務の資格を取得したほうが有利になります。

8.4 移動介護従業者(ガイドヘルパー)

ガイドヘルパーは、障害を理由に外出が困難な人をサポートするための資格です。移動時に適切な介護をするための知識や技術を身につけます。介護系の資格をすでに保有している場合、最短2日で取得可能。業務の幅を広げたい方に人気の資格です。

8.5 レクリエーション介護士

介護施設で、高齢者の生きがいや楽しみとして、また身体機能の向上を目的に取り入れられる各種レクリエーション。その企画や実施について、専門的な知識を身につけていることを証明する資格です。比較的新しい資格ですが、笑顔あふれる介護施設運営のために、注目されている資格の一つです。

8.6 介護予防運動指導員

高齢者を対象に、介護を必要としない状態を継続することを目的として、各種指導を行う専門家です。筋力アップ運動や各種トレーニングを通して、身体ケアを行うためのスキルを身につけられます。介護現場で役立つ資格です。

8.7 福祉用具専門相談員

福祉用具に関して、専門知識を有している専門家です。利用者さんの状況に合わせて、適切な福祉用具を提案し、相談にも乗ります。厚生労働大臣が指定する講習会を受講すれば、資格を付与されます。

9.介護分野でも通用する国家資格

こちらは、介護系資格として注目される機会は少ないものの、介護分野でも活躍できる国家資格の一覧です。該当する資格を保有している方は、ぜひ介護業界も転職希望先の対象に加えてみてください。

9.1 精神保健福祉士

精神科ソーシャルワーカー(PSW)とも呼ばれる、精神疾患支援の専門家です。さまざまな精神疾患を抱えている人が、できる限り自立した生活を継続していけるよう、各種支援を提供します。具体的には、悩みを抱える患者さんやその家族を公的支援につなげたり、就職先をあっせんしたりします。介護業界でも重宝される専門家ですし、活躍できる施設が多くあります。

9.2 社会福祉士

身体的障害もしくは精神的障害を持つ方の相談に乗る専門職が、社会福祉士です。環境上のなんらかの理由を抱え、日常生活を送るのが困難になってしまった方の相談先として機能しています。社会福祉士になるためには、福祉系の学校や養成施設で学ぶ必要があります。社会福祉士が活躍する場は数多くありますが、介護施設はその一つです。利用者さん一人ひとりとしっかり向き合い、それぞれの悩みに耳を傾け、より良い方向へと導いていける資格でしょう。

9.3 理学療法士

理学療法士は、医学的リハビリテーションの専門家です。病気やケガで身体が不自由になった人をサポートする専門家として、病院に勤務するイメージが強い理学療法士。近年、介護施設で活躍する人も増えてきています。介護老人保健施設やデイケア、訪問リハビリ施設にて専門的なリハビリテーションを行うほか、その他の施設で機能訓練指導員としての役割を担うケースも多いようです。

9.4 作業療法士

応用動作のリハビリテーションを行う専門職が作業療法士です。作業活動を通じて、日常生活に必要な動作を難なくできるよう、サポートしていきます。作業療法士が主に活躍しているのは、介護老人保健施設です。在宅復帰を目的にしたリハビリテーションを行う介護老人保健施設で、作業療法士が果たす役割は大きいと言えるでしょう。

9.5 柔道整復師

接骨院や整骨院、整形外科クリニックといった場所で活躍するイメージの強い柔道整復師。骨折・脱臼・打撲・捻挫といった外傷トラブルに対し、整復や固定といった方法でアプローチできる専門家です。介護施設では、機能訓練指導員として働くケースが一般的です。利用者さんが自立した生活を送れるよう、心身の状態に合った機能訓練計画表を立て、その実行をサポートする仕事です。

10.介護系の資格の取り方

介護系の資格に興味を抱いたとき、「具体的に何をすればいいのだろう…」と悩む方は多いのではないでしょうか。介護系資格の取り方には、主に以下の3つがあります。

10.1 独学

試験合格のために必要な学習を、自分の力で行う方法です。参考書選びから試験当日までのスケジューリング、勉強方法の確立など、すべて自分で行う方法です。普段から、独学で何かを学ぶことに慣れている方におすすめです。

専門家のサポートを受けられない分、リスクは高い方法ではありますが、インターネットの活用など、勉強方法の幅は広がってきています。何より、その他の方法と比較して、学習費用を大幅に節約できる点がメリットと言えるでしょう。

10.2 介護スクールに通う

求人数が多い介護の仕事。その注目度の高まりとともに、介護系資格取得に特化した介護スクールが増加しています。こうしたスクールに通えば、カリキュラムに沿って学習していくだけで、介護の知識や技術を体系的に学べるというメリットがあります。

費用は高めですが、プロの講師のもとで、じっくり確実に学んでいける点が魅力の一つ。わからない点があったときのフォロー体制も充実しています。また、一緒に学ぶ仲間がいる分、モチベーションを維持しやすいでしょう。

10.3 通信講座を受ける

独学とスクールの良いところ取りとも言えるのが、各種通信講座です。お目当ての資格に対応した講座を選択し、届いた教材やカリキュラムに沿って学習していきます。独学よりもお金はかかりますが、スクールに通うよりも節約できます。また、自分のペースで学習を進めていけるため、その他の学校や仕事、家事や子育てとの両立を目指しやすいでしょう。

ただし、取得する資格によっては、スクーリングによる授業や演習を受けることが必須というケースも。自分が目的とする資格についてリサーチしたうえで、検討してみてください。

11.通信講座の選び方

介護系資格取得を目指して通信講座を受講するなら、その選び方が鍵となります。通信講座は、どれも同じではありません。ぜひ以下のポイントを意識してみてください。

  • 受講費用
  • 教材や講座内容の充実度
  • サポート体制の充実度
  • 合格率
  • 運営会社の信頼性

一般的に「スクールよりも安い」と言われる通信講座ですが、その費用は運営会社によって大きく異なります。高すぎる講座はもちろん、安すぎる講座にも慎重に対応してください。教材や講座内容がどの程度充実しているのか、実際に受講した人の口コミはどうなのかなど、あらゆる視点からチェックするのがおすすめです。

また、通信講座を受講する際に注意したいのが、「挫折対策」です。専用の教材が用意されているとはいえ、自力ではどうしても理解できない内容が出てくる可能性があるでしょう。こんなとき、しっかりフォローしてもらえる体制が整っていれば、勉強が嫌になるリスクを低減できます。

つい見落としてしまいがちですが、運営会社の信頼性にもぜひ注目してみてください。「学習途中に会社が倒産した!」なんてことになれば一大事です。多くの受講者から支持され、安定した経営を行っている通信講座を選択しましょう。

12.スクールの選び方

続いて、介護系資格を取得するための、スクール選びのポイントについてもチェックしてみましょう。スクールを選ぶときの主なポイントは以下のとおりです。

  • 費用(入学費用や受講費用など)
  • 通学の利便性
  • 授業時間が自分に合っていること
  • 欠席時の対応
  • 講師のレベル
  • 講座修了後の就職サポート
  • フォロー体制

スクール選びでも、やはり費用は重要なポイント。単純に高いか安いかだけではなく、「自分にとって支払うだけのメリットが期待できるスクールかどうか」という視点を大切にしてみてください。スクールは通学して学ぶスタイルが基本ですから、自宅や職場から近ければ、その分楽になります。また、「平日の夜や休日にも授業が開講されている」といったスクールなら、社会人でも資格取得を目指しやすいでしょう。

スクール選びで大切なのは、「授業を欠席した場合の対応」についてです。無料で振り替えられるところもあれば、振り替えられるものの有料となるところ、そもそも振替制度がないところと、スクールによって違います。無理なく学び続けるために、ぜひチェックしてみてください。

もちろん、講師の質や卒業後のサポートも重視したいポイントです。実際にスクールに通った方々の口コミを参考に、自分に合ったスクールを選びましょう。

13.テキストの選び方

最後は、独学で学ぶ方向けの「テキスト」の選び方です。自分ですべてを管理する独学では、テキスト選びが最大の難所に。ここで間違えると、資格を取得できないまま挫折してしまう恐れがあります。失敗しないためのポイントは、以下のとおりです。

  • 自分に合った内容であること
  • 合格のために必要な情報が、端的にまとまっていること

独学で学ぶためのテキスト選びは、「万人受け」よりも「自分の好み」が大切です。同じ内容でも、どう解説されればわかりやすいのかは、個々によって異なります。テキストを選ぶ際には、ぜひ実際に手に取って、中身をパラパラとめくってみてください。文字の大きさや色の使い方など、自分にとって「わかりやすい」と感じられるものを選ぶのがおすすめです。

また、最短ルートで合格を目指すためには、重点的に学習するポイントの絞り込みが重要です。ポイントを押さえて解説してくれているテキストを選んでください。

介護について基本から学ぶ場合は、図やイラストができるだけ多いものを選択するのがおすすめです。とっつきやすいテキストからスタートしたほうが、挫折しづらいでしょう。

まとめ

介護系資格は将来にも役に立ちます。ぜひ取得を検討してみてください。

今回は、介護系資格についてまとめました。さまざまな資格がある介護業界。自身の今の状況と今後のキャリアプランに合った資格を取得することで、より自信を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

介護系資格を取得するにはスクールに通って学ばなければならないものが多く、最初のハードルは高い傾向にあります。とはいえ、資格を取得しておけば、介護業界での転職は俄然有利になりますから、ぜひ挑戦してみてください。資格を通じて、キャリアアップや収入アップを目指していきましょう。

参考サイト