介護士にストレスがたまりやすい理由とは?おすすめ・NG解消方法も解説

介護士として働く人の中には、日々強いストレスにさらされ続けている人もいます。「このままでは仕事を続けられない…」と思うほど追い込まれてしまったり、うつ病を発症してしまったりするケースもあるでしょう。

そのほかの仕事と比較しても、介護士の仕事は「ストレスがたまりやすい」と言われています。その原因はどこにあり、またどのように解消すれば良いのでしょうか。ストレス度チェックや、特に注意するべきタイプについて解説します。

1.ストレスの原因

介護士の仕事は、その他の業種と比較して「ストレスが多い」と言われています。その理由の多くは、介護士をとりまく労働環境にあると言えるでしょう。ストレスの原因として挙げられる、具体的なポイントを5つ紹介します。

1.1 人手不足による負担増

介護士がストレスを抱えてしまう理由、1つ目は「人手不足」です。少子高齢化が急速に進む中で、介護職のニーズは年々上昇しています。しかし、だからといって介護職に携わる人の数が急激に増えるわけではありません。慢性的な人手不足は、スタッフひとりひとりの負担増という形で表れてしまいます。

自分一人でこなすべき業務量が増えれば、精神的な余裕を持つのは難しくなるでしょう。また業務時間内に仕事が終わらなければ残業しなければいけませんし、シフトに入る人がいなければ休日出勤を求められます。ライフワークバランスが乱れ、それを自分だけではどうにもできないことから、ストレスを抱えてしまうケースが少なくないようです。

1.2 居心地の悪い人間関係

介護とは、チームで取り組む仕事です。効率良く業務を回していくためには、しっかりとした人間関係が必須。しかし残念ながら、スタッフ同士の人間関係に悩み、ストレスを抱えてしまう方も少なくありません。

世の中にはいろいろな考えの人がいますし、全員と仲良くできるわけではないでしょう。しかし人手不足の状況では、スタッフ同士の相性にまで気を配っていられません。結果として、「嫌な人と一緒の仕事で精神的にも限界…」となってしまう可能性があります。

人間とは、自分に余裕のないときほど、他者に寛容になれないものです。たとえば、人手不足を埋めるため新人が即戦力として現場に回されたとしたら、周囲のベテランは「足手まとい」と感じてしまうでしょう。ベテランたちもギリギリのところで仕事を回しているからこそ、「新人育成にまで手が回らない」と思うのも無理はありません。

こうした悪循環に、施設全体が取り込まれてしまっているケースも多く見られます。一部のスタッフだけではなく、施設全体に新人を教育する余裕がなくなりベテランとの間に溝が発生。ストレスを抱えた新人が居付かなくなり、現場の人手不足はさらに深刻化します。するとベテランスタッフたちのストレス度合いはさらに上昇し、より人間関係が悪化してしまう恐れもあるでしょう。

1.3 身体的負担が大きい

介護の仕事は、身体的な負担も大きい仕事です。女性が中心となって働くイメージも強いですが、実際には「肉体労働」と言っても過言ではありません。

利用者さんのお世話をするため、体を支えたり抱えたりするのは重労働です。実際に、日々の激務に耐えかねて、肩や腰、背中に痛みが生じてしまう方も少なくありません。夜勤がある職場では、生活リズムが乱れやすく、疲れが取れにくいという事情もあるでしょう。

  • 日々の激務をこなすので体力的に精一杯
  • 休日は疲れを癒やすだけで終わってしまい、好きなことができない

このような状況も、ストレスにつながりがちです。

1.4 給与面での不満

どれだけ大変な仕事でも、「業務に見合うだけの十分な給料が得られる」という状況であれば、やりがいを持って働ける人も多いのではないでしょうか。しかし介護業界の場合、「重労働低賃金」といったイメージも根付いています。昨今はだいぶ改善しているとはいえ、まだまだ「勤務実態に給与面での待遇が追い付いていない」と感じる方も多いようです。経済的な不安や不満も、人間にとってはストレスの要因になります。また、「こんなにがんばっているのに評価されない」など、職場の評価システムに対してストレスを感じている方も少なくありません。

1.5 利用者との関係性

介護の仕事をする上で、無視できないのが利用者さんとの関係性です。さまざまな介護サービスを提供するためには、土台となる人間関係が必要になります。しかし中には、「どうしても心を開いてもらえない」「どんなにがんばっても介護拒否されてしまう…」といった悩みが発生するケースもあります。

利用者さんの中には、認知症がわずらっていたり、自分が介護される状況が受け入れられなかったりと、さまざまな理由で介護士に対してきつく当たる方もいます。熱意を持って仕事に取り組んでいても、心無い言葉を掛けられれば、意欲を失うのは当然のこと。苦手意識が芽生え、業務に対してさらに強いストレスを感じてしまうでしょう。

2.ストレスをためやすい人・うまく発散できない人の特徴

「ストレスがたまりやすい」とは言われる介護職ではありますが、介護士の中には、上手にストレスと付き合っている方も少なくありません。現代人として仕事を続けていく以上、「ストレスをためない」というのは難しいもの。だからこそ、たまったストレスを上手に発散することが大切です。ストレスを感じやすい人や発散するのが苦手な人は、特に注意する必要があるでしょう。

以下で紹介する5つの条件に当てはまるところがあれば、ぜひ意識的にストレス対策を行ってください。

2.1 真面目で完璧主義な人

真面目で完璧主義な人は、仕事に対して手を抜くことが苦手です。どんな仕事にも全力で、一生懸命に取り組むでしょう。介護施設にとっては貴重な戦力と言えるでしょうが、本人はあらゆる物事を自分一人で抱えがちになります。自分が抱えているストレスに、自分で気づいていないケースも多く見られます。

2.2 繊細な人

細かい点にまで気が付くのは、介護士として働く上での強みと言えるでしょう。とはいえ、細かい点に気が付き過ぎることが原因で、ストレスを抱えてしまう恐れがあります。同僚や利用者さんからどう思われているのか気になってしまったり、ささいなミスをいつまでも引きずってしまったりと、気持ちの切り替えが苦手な人も。考えれば考えるほど悲観的になり、ストレスを抱えてしまいがちです。

また「相手がどう思うか」が気になって、言いたい言葉を言えないのもこのタイプ。モヤモヤした感情を抱え込み、我慢できないほど大きなストレスになってしまうケースもあるでしょう。

2.3 せっかちで短気な人

せっかちで短気な人は、自分のペースで動けない状況に対してストレスを感じがちです。チームで働いている人の様子や仕事内容にイライラし、ときには利用者さんに対してストレスを抱いてしまうこともあるでしょう。効率重視で気持ちに余裕が持てなくなってしまうため、注意が必要です。

2.4 仕事が生きがいな人

仕事が生きがいな人は、慢性的な人手不足で悩む介護業界にとって、救世主のように見えるかもしれません。しかし生き生きと仕事をしているように見えて、実は心の内側にストレスを抱えがちなタイプです。仕事が生きがいな人が忙しい介護職に就くと、周囲に求められるまま仕事に邁進してしまいます。すると十分な余暇が取れず、ストレス発散の場を失くしてしまう可能性があるのです。ストレスが原因で何らかの問題が発生した際に、「まさかあの人が」と周囲に驚かれるのもこのタイプでしょう。

2.5 趣味がない人

ストレス発散に役立つのが、趣味の時間です。どれだけ仕事で忙しく、嫌なことがあっても「好きな目的があればがんばれる」という方も多いのではないでしょうか。趣味がないと、せっかくの休日にも「何をして楽しめば良いのかわからない」といった事態に陥りがちです。何のために大変な仕事をしているのかわからなくなり、余計にストレスを抱えてしまう可能性があります。

3.ストレス度のチェック

ストレスは、ため込み過ぎないうちにうまく発散するのがベストです。とはいえ、自分自身のストレスの状況を、冷静かつ的確に判断するのは難しいでしょう。2015年12月より、労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が義務化されています。従業員が50人未満の事業所については努力義務ですが、自身のストレス度を確認するヒントとして活用してみてください。(※1)

職場でストレスチェックを受けられない場合や、より手軽にセルフチェックしたい場合には、以下の項目を参考にしてみましょう。

  • なんとなく元気が出ない
  • 食欲がわかない
  • 常にイライラしている
  • 不安で落ち着かない気分になる
  • 何かをするのがとても億劫である
  • めまいがする
  • 腹痛や頭痛といった症状がある
  • 眠りが浅い、眠れない

これらの項目に当てはまる点が多ければ、ストレスがたまっている可能性があります。厚生労働省運営の「5分でできる職場のストレスセルフチェック」など、インターネット上で利用できる、より詳細な無料ツールを活用してみてください。

4.ストレス解消方法

ストレスがたまったときに、どう解消すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。介護職におすすめのストレス解消法を5つ紹介します。

4.1 趣味に没頭する

ストレス解消に役立つのが、「趣味を楽しむこと」です。仕事を忘れて没頭できるような時間を、ぜひ大切にしてみてください。映画や本など、まったく別の世界を楽しめるような趣味もおすすめです。またハンドメイドやプラモデルなど、細かな作業も集中できて良いでしょう。山歩きやヨガなど、体を動かす系の趣味も、気持ちを切り替えるのに役立ちます。ぜひ無心で楽しめる趣味を探してみてください。

4.2 生活リズムを整える

あまり知られていませんが、「眠る」という行為もストレス解消法の一つです。とはいえストレスフルな状況になると、脳や体のリズムが崩れ、うまく眠れなくなってしまう可能性も。だからこそ、生活リズムを整えるところからスタートしましょう。

まずは朝早く起きて、一番に日の光を浴びてください。日中は適度な運動を心掛けると効果的です。ウォーキングやストレッチで十分ですから、自分にとって心地よいと思えるものを選んでください。朝一番に日光を浴びると、体内時計がリセットされます。夜になると自然に眠くなりますから、ぐっすり眠りましょう。朝にはすっきり目覚められるはずです。

4.3 運動する

介護の仕事でストレスがたまったときには、思いきり運動するのもおすすめです。

  • 水泳
  • テニス
  • ゴルフ
  • ジムでの筋トレ
  • ボクシング
  • ダンス
  • マラソン

メニューはなんでも構いませんから、ぜひ体を動かす機会を設けてみてください。特にこれまで運動してこなかった…という場合、ジムへの入会や、新たな習い事をスタートするのもおすすめです。人間関係も広がりますし、仕事とはまったく違う時間を楽しめるでしょう。

4.4 誰かと会話をする

忙しくて特別な行動をするのが難しい…という場合には、ぜひ身近な人との会話を楽しんでみてください。家族や友人に悩みや不安を聞いてもらうだけで、気持ちは楽になるものです。また、あえて仕事に触れず、まったく関係のない話で笑うのもおすすめ。気持ちが晴れて、細かい点などどうでもいいと思えるようになるでしょう。

4.5 不満を紙に書き出してみる

「ストレス解消したくても、人と関わること自体がストレス…」と感じてしまう場合には、ぜひ自分自身と向き合ってみてください。心の内側にある不満を、すべて紙に書き出してみましょう。頭の中でなんとなくモヤモヤしていることも、紙に書いて可視化すれば、情報が整理されます。自分が何にモヤモヤしているのかわかれば、具体的な対処法も見えてくるはずです。

5.おすすめ出来ないストレス解消法

上とは反対に、避けた方が良いストレス解消法もあります。5つのNG解消法を紹介するので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

5.1 甘いものに走る

介護職で非常に強いストレスにさらされたとき、「甘いものを食べて気分転換したくなる!」と思う方も多いのではないでしょうか。確かに、疲れているときに甘いものを食べると、一時的に血糖値が上昇します。気持ちが落ち着いたり、元気が湧いてきたりすると感じるのは、このためです。

しかし残念ながら、こうした感覚は一時的なもので、時間の経過と共に血糖値が落ち着けば、また疲労感や倦怠感がやってくるでしょう。甘いものでストレス解消しようとすると、常に摂取し続けなくてはいけません。健康にもダイエットにも悪影響を及ぼす恐れがあります。

5.2 お酒に頼る

アルコールも、私たち人間の感情を、一時的に開放的にする力を持っています。しかし残念ながら、こちらも長続きするものではありません。ストレス解消を名目に深酒すれば、睡眠の質は低下しますし、次の日の疲労感も増してしまうでしょう。体がアルコールに慣れれば、より強い刺激を求め、アルコール依存症になってしまうリスクもあります。

5.3 ギャンブルにハマる

ギャンブルで勝ったときには、人間の脳にはドーパミンという物質が分泌されます。一時的に幸福感をもたらしてくれるため、「ストレス解消にぴったり!」と思う方もいるかもしれません。しかし残念ながら、ギャンブルで常に勝ち続けられるとは限りません。負ければさらにストレスを蓄積する原因になってしまうでしょう。ギャンブルから金銭問題へと発展すれば、生活全体に影響を及ぼしてしまいます。

5.4 人の悪口を言う

スタッフ同士の人間関係や、利用者さんとのコミュニケーションに対してストレスを抱えていると、相手の悪口を言うことでストレス解消につなげようとするケースも。しかしこちらもNGです。誰かに話を聞いてもらうのは効果的ですが、相手の立場を考えず、悪口ばかりを言うのは逆効果でしょう。人間関係が悪化し、さらにストレスを増してしまう可能性もあります。もちろん、SNS上で書き込むのも厳禁です。

5.5 ショッピングで浪費する

特に女性に多いのが、「好きなものを好きなだけ買ってストレスを解消する」というパターンです。確かに、ごほうびをきっかけに「よしまたがんばろう!」と思えることもあるでしょう。しかし「購入する」という行為自体が目的になっている場合、注意が必要です。浪費のあとに我に返れば、罪悪感にさいなまれる恐れもあるでしょう。また経済的な問題も生じてしまいます。

6.ストレスとうまく付き合っていくためには

介護職は、さまざまな理由からストレスがたまりやすいと言われています。だからこそ、介護職を長く続けていくためには、自分なりの「ストレスとうまく付き合っていくコツ」を身につける必要があるでしょう。

具体的には、

  • 自分が何に対してストレスを感じているのかはっきりさせる
  • 自分のストレス度合いに敏感になる
  • 限界まで無理をする前に、自分に合った方法で発散する

これらのポイントを意識してみてください。「自分はストレスを抱えやすいタイプである」とわかっているだけでも、ストレスに対する意識は高まります。

また、ストレス度が高すぎる職場からは、距離を置くのもおすすめです。介護業界の人手不足は、ストレスの原因にもなりますが、転職のチャンスにもつながります。自分がストレスを感じやすいポイントを明らかにした上で、より快適に働ける環境を探してみてください。

  • きちんと休める
  • 肉体的負担が重すぎない
  • 新人の教育制度が充実していて、きちんと機能している

これらの条件が整っている介護施設では、働く人の心にも余裕が生まれ、人間関係も円滑に運びやすくなります。仕事をする以上、ストレスを完全にゼロにするのは難しいですが、上手に発散しながら、ためすぎることなく快適に働き続けられるのではないでしょうか。ぜひチェックしてみてください。

まとめ

「ストレスがたまっている」と感じている人は、自分自身の日常生活や今後のことについて考えてみるといいかもしれません。「現在の環境でストレスとうまく付き合っていけるのか?」、「ストレスと付き合っていけそうにない場合はどうするのか?」といったことを一度じっくりと考えてみたほうがいいかもしれません。また、ストレスでとても辛い時やうつ病の疑いがある場合は無理をせず速やかに心療内科に受診しましょう。

参考サイト