介護士と介護福祉士の違いについて‐仕事内容や待遇などの違いについて解説

介護業界で働き始めると介護士や介護福祉士という名称をよく聞いたり、見たりすることがあると思います。しかし、介護士と介護福祉士の違いについてよく分からない人もおられると思います。

この記事では介護士と介護福祉士の違いについて、仕事内容や給与・待遇などの違い、介護福祉士取得のメリット、介護福祉士の取得方法などについて解説します。

1.介護士とは

介護の業務に従事している人のことを総称して介護士と呼びます。特に資格の有無は関係なく、介護の仕事をしている人であれば誰でも介護士と名乗ることが出来ます。介護士のほかに、介護スタッフや介護職員、ヘルパーと呼ばれることもあります。

介護士として働く場合、無資格で未経験でも働けるところもありますが、入職前に「介護職員初任者研修の修了」を条件にしているところもあります。また、以前は「ホームヘルパー2級」という資格がありましたが、現在は廃止され「介護職員初任者研修」が代わりに実施されています。

2.介護福祉士とは

介護福祉士とは国家資格である「介護福祉士国家試験」に合格した介護士で、試験に合格するためには国が定めた基準を満たす介護福祉サービスに関する知識や技術を身に着ける必要があります。

3.介護福祉士と介護士の違い

介護士と介護福祉士の違いについて、資格、業務、給与・待遇の面で解説していきます。

3.1 資格

最も大きな違いは資格についてです。介護の仕事自体は介護福祉士の資格を持っていなくても出来ます。資格の有無に関わらず介護業界で働いていれば介護士を名乗ることが出来ます。しかし、介護福祉士は介護福祉士の資格を取得している人しか「介護福祉士」を名乗ることはできません。介護福祉士を取得するためには介護福祉士国家試験に合格する必要があります。

3.2 業務内容

介護士も介護福祉士も利用者・入居者に介護サービスを提供するという点では同じです。ただし、介護福祉士は介護福祉サービスに関する知識や技術を活かした業務に携わることが多くなります。よって、介護士より責任のある業務を任されることになります。ケアプラン作成に必要なサービス担当者会議に出席したり、介護施設の利用者・入居者の家族に対して介護サービスの説明・近況報告などを行ったり、他の介護士の指導を行うなどリーダー的な業務も行います。また、管理職を任されることもあります。

3.3 給与・待遇

介護士と介護福祉士は手当や基本給でも違ってきます。厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」介護福祉士の平均給与は32万8,720円で、保有資格のない介護士は27万1,260円で、約5万円ほど差があります。

また、介護福祉士を取得すると資格手当などが付いたり、管理職を任されれば役職手当なども付くなどして給与がさらにあがります。

4.介護福祉士を取得するメリット

介護福祉士を取るメリットとして主に「給与アップ」「キャリアアップ」「介護福祉サービスの専門的知識・技術を学べる」「転職に有利」といった面があります。以下に解説します。

4.1 昇給や資格手当などで給与アップ

多くの介護施設では介護福祉士を取得すると資格手当が付き、基本給もアップします。また、管理者などの役職が与えられる可能性が高くなり、役職手当などが付くこともあります。介護福祉士として長年勤めれば、国から特定処遇改善加算などのサポートを受けられ、さらなる収入アップも見込めます。

その他、非正規の介護士でも介護福祉士を取得することにより正職員にしてもらえる可能性が高くなり、給与もアップします。

4.2 キャリアアップが目指せる

介護福祉士を取得していると介護福祉サービスに関する知識・技術を身に着けていると見なされるため、介護現場ではリーダー的な役割を任される機会が増えてきます。さらに、リーダー的な経験を積んでいくと今度は管理者などを任されるようになる可能性もあります。

また、介護福祉士として5年以上の実務経験を積むとケアマネージャー(介護支援専門員)も目指すことが出来るようになります。

4.3 介護福祉サービスの専門的な知識、技術を体系的に学ぶことができる

介護福祉士国家試験に合格するためには国が定めた基準を満たす介護福祉サービスに関する知識や技術を身に着ける必要があります。従って、介護福祉サービスの専門的な知識と技術を勉強しなければ試験に合格することはできません。

4.4 転職に有利

介護福祉士を取得することは介護福祉サービスに関して高度な知識と技術を持っていることの証明になります。よって、就職・転職の時には大きなアピールポイントになります。また、ホワイトな介護施設への転職の可能性も高くなります。

5.介護福祉士の取得する方法

介護福祉士を取得する方法には「実務経験ルート」と「養成施設ルート」と「福祉系高等学校ルート」の3つのルートがあります。どれか1つのルートを経て受験資格を得ることができ、国家資格に合格する必要があります。

介護福祉士国家試験は毎年1月頃に筆記試験があり、3月頃に実技試験が行われています。介護福祉士国家試験は125点満点であり、合格基準点は60%程度(75点程度)とされています。また、介護福祉士国家試験の合格率は6~7割前後と高めであり、他の国家資格と比べると合格のハードルは比較的低めとなっています。

5.1 実務経験ルート

実務経験ルートは無資格で介護士となった人が通るルートであることが多く、「従業期間3年以上かつ540日以上」の実務経験と実務者研修を修了することで受験資格を得ることが出来ます。また、このルートの場合は実技試験を受ける必要はなく、筆記試験のみを受験すればよいことになっています。

介護の仕事が自分に合っているのかを見極めたうえで介護福祉士の取得を目指す方にはおすすめのルートです。

5.2 養成施設ルート

高校を卒業してから将来的に介護職を目指す場合に多いルートとなります。高校卒業後に厚生労働省に指定された専門の養成施設に進学し、介護に関する知識を学んでから国家資格を受験します。

学歴によって養成施設に通う期間が違います。

  • 普通科高等学校の卒業者の場合→養成施設を2年以上通う
  • 福祉系大学・社会福祉士養成施設等・保育士養成施設等のいずれかの卒業者の場合→養成施設を1年以上通う

このルートの場合も実技試験を受ける必要はなく、筆記試験のみを受験すればよいことになっています。

5.3 福祉系高等学校ルート

中学生など早い段階で介護業界に進みたいと思っている人はこのルートで受験資格を得ます。福祉系の高等学校に進学して、介護福祉士を目指します。

このルートでの介護福祉士の取得は福祉系の高等学校に進学した時期によって要件が変わってきます。平成21年度以降の入学者は卒業後に筆記試験を受けるだけでよかったが、平成20年度以前の入学者は、筆記試験と実技試験のどちらも受ける必要があります。

福祉系特例高等学校の場合は卒業した後に9ヶ月以上の介護の実務経験を満たす必要があり、筆記試験と実技試験の両方に合格しなければなりません。

6.介護福祉士と他の介護福祉系資格の違いについて

介護福祉士以外の介護福祉系の資格として社会福祉士とケアマネージャーなどがあります。ここでは介護福祉士と社会福祉士、ケアマネージャーについて資格や業務内容などの違いを解説します。

ちなみにどちらの試験も介護福祉士より合格率は低くなっています。また、平均給与もどちらも介護福祉士より高くなっています。

6.1 介護福祉士とケアマネジャーの違いについて

ケアマネージャーは国家資格ではなく公的資格になります。ケアマネージャーと介護福祉士の大きな違いは業務内容になります。介護福祉士は介護現場で入浴・排泄・食事などの身体介助や生活支援などの介護サービスを提供します。ケアマネージャーは介護が必要な高齢者の状況や希望に応じて適切な介護サービスを受けられるようにケアプランの作成や調整を行います。ケアプランを管理しているのはケアマネージャーであるため、介護福祉士がケアプランを勝手に変更することは出来ません。

ケアマネージャーになるためには、まずは「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければなりません。介護支援専門員実務研修受講試験の合格率は2割前後となっています。試験に合格し資格を取得した後は「介護支援専門員実務研修」を受講し、都道府県への登録を行わなければなりません。そうしてようやく「介護支援専門員証」が交付されます。また、ケアマネージャーは5年ごとに資格の更新を行う必要があり、更新に必要な研修を受講しなければなりません。

ケアマネージャーになるための「介護支援専門員実務研修受講試験」には受験資格があり、以下のどちらかの要件を満たす必要があります。

  • 介護福祉士や看護師、理学療法士などの国家資格に基づく業務に5年以上従事
  • 施設などで生活相談員、支援相談員などの相談援助業務に5年以上従事

生活相談員や支援相談員になるには、実務経験や社会福祉士資格が必須となるため、未経験では困難な面があります。

ケアマネージャーの平均給与は厚生労働省の「令和3年度 介護従事者処遇状況等調査結果」によると36万2,290円となっています。

6.2 介護福祉士と社会福祉士の違いについて

社会福祉士も国家資格になります。介護福祉士と社会福祉士の大きな違いも業務内容になります。社会福祉士は高齢者や障害者だけでなく子供や低所得者、生活に困っている人など幅広い人に対しての相談業務となります。利用できるサービスの紹介や相談や助言、指導などを行い相談者が安心して日常生活を送れるように支援します。

社会福祉士も受験資格があり、福祉系の大学か短大か養成施設などに通い所定の課程を修了しなければなりません。社会福祉士の合格率は2~3割となっています。

社会福祉士の平均給与は厚生労働省の「令和3年度 介護従事者処遇状況等調査結果」によると36万3,480円となっています。

まとめ

介護士と介護福祉士の違いについて、仕事内容や給与・待遇などの違い、介護福祉士取得のメリット、介護福祉士の取得方法、他の介護福祉資格との違いなどについて解説してきました。

介護業界は今後も成長していく産業であり介護福祉士の重要性は今後も増していきます。働きながら介護福祉士を目指すのは大変な面もありますが、介護福祉士は他の国家資格と比べると合格率も高く、給与面やキャリアアップ、転職などの面で有利になります。介護業界で働くのであれば介護福祉士を取得しておいても損はありません。特に長く勤めようと思われる方はぜひ介護福祉士を取得してください。また、介護福祉士を取得してからケアマネージャーを目指し、さらなるキャリアアップや給与アップを目指すのも良いでしょう。

参考サイト