介護事務の需要と将来性について

介護の仕事と言えば力仕事のイメージを持っている人もおられると思います。しかし、介護にも力仕事や現場業務の仕事ばかりではなく事務的な仕事はあります。よく、資格の通信講座でも介護事務の講座を見かけることがあります。

介護事務について気になる人もおられると思います。この記事では介護事務について仕事内容や需要、将来性などについて解説していこうと思います。

1.介護事務とは

介護事務について仕事内容や一般事務、医療事務との違い、業務をするために資格がいるのかについて解説していきます。

1.1 介護事務の仕事内容

介護事務の仕事内容は、介護施設や在宅ケアサービスなどで介護保険関連の業務の事務作業を担当することです。介護施設は利用者・入居者に介護サービスを提供することで介護報酬を請求することができます。介護報酬は、介護施設の主な収入源です。介護事務は、この介護報酬請求の手続きを担当し、介護給付費明細書の作成や提出を行います。介護給付費明細書には、サービス内容や利用者へ提供した介護サービスの実績の状況などが記載されています。

また、介護事務は、利用者や家族とのコミュニケーションや、ケアマネジャーの書類作成業務の手伝い、介護サービス提供に関する情報の管理なども担当することがあります。

1.2 一般事務との違い

介護事務と一般事務の業務内容の違いについて、介護事務の業務は、介護保険制度や介護報酬のルールを理解したうえで、介護給付費明細書の作成業務を行います。その他、利用者・入居者情報の管理など、介護施設や在宅ケアサービスなどで行われる介護に特化した業務が中心となります。一方、一般事務の業務は、企業や団体の経営に必要な各種手続きや書類作成、データ入力や電話・来客対応、備品管理などの一般的な事務業務が中心となります。

介護事務には、介護保険制度や介護報酬請求等の専門知識、利用者・入居者やその家族とのコミュニケーション能力、PCスキル、施設によっては介護現場で介護士の応援もすることがあるため、利用者・入居者に対しての思いやりなど介護に必要なスキルが必要とされます。一方、一般事務には、ビジネスマナーやPCスキル、コミュニケーション能力などが必要とされます。

1.3 医療事務との違い

介護事務は介護施設での業務が中心になりますが、医療事務は病院やクリニックなどの医療機関での業務が中心になります。医療事務の業務は、病院や医療機関において、医療費の計算や保険者に診療報酬を請求したり診療や看護に必要な手続きや書類作成、診療情報の管理など、医療に特化した業務が中心となります。

医療事務が対象とする人々は、病気や怪我などの治療を必要とする人々です。

医療事務には、医療保険制度に関する知識、診療情報の管理能力などが必要とされます。

1.4 資格がいるのか

ユーキャンなどが通信講座で介護事務について資格と称してPRしています。介護事務について「資格が無いとできないのか」、「資格があると就職・転職に有利なのか」と疑問に思う人もおられるかと思います。

結論を言うと介護事務は資格が無くても業務を行うことができます。この資格を取ったからと言って就職・転職に有利になることはあまりありません。

自分自身の勉強のために取っておくぶんには良いかもしれません。

2.介護事務の需要は?

高齢者人口が増加する中で、介護業界の需要が増えており、それに伴い介護事務の需要も高まっています。

介護事務は介護報酬請求業務や利用者・入居者情報の管理、ケアマネジャーの書類作成業務の手伝いなど、様々な業務を担当し、時には介護現場の手伝いに行くこともあります。施設側からは「なんでも屋」のような感じで重宝され、介護事務に対する需要は今後も高くなると予想されています。

3.介護事務の求人について

介護事務の需要は高いため、介護事務の求人も多いかと言えばそうではありません。介護事務のみを募集している求人はほとんどありません。介護報酬の請求業務は月初から10日までの限られた日数で完了します。施設の規模によりますが、管理者や主任などが月末から月初めに3~4日間、介護報酬の請求業務に取り組めば済んでしまいます。

多くの施設では介護事務のみを行っている職員はあまりおらず、管理者や主任などが介護現場の業務と介護事務的な仕事を兼業で行っている場合がよくあります。また、施設で勤務していた介護士が介護で体を壊したりして体力的に現場業務が厳しくなったために異動で介護事務をするようになる場合があります。

4.介護事務の将来性について

介護事務の中でもルーチン化できそうな仕事は自動化されていく可能性が高いでしょう。今後の介護業界のDX化などについて考えた場合、介護事務もより幅広い専門知識を身に付けたり、AIでは置き換えることが困難なスキルを身に付けて行った方が良いでしょう。

また、介護現場では介護士が不足しているため、介護事務の仕事に就職・転職できたとしても介護事務だけをしておけばよいことも無く、介護現場で手伝いなどを行う可能性があります。従って、「介護事務の仕事しかしない」という姿勢でいるよりは、「様々な業務に挑戦し、色々なことを経験したい」といった姿勢で取り組んだ方が良いでしょう。施設によっては、介護事務として働いていた場合でも介護士を兼業していただくために介護職員初任者研修の取得をさせる施設もあります。そうした場合は将来のことを考えて、介護福祉士やケアマネージャーも取得しておいた方が良いでしょう。キャリアアップを考えた場合に、様々な業務の経験や介護福祉士やケアマネージャーなどの資格取得は大きなプラスとなるでしょう。

5.介護事務に向いている人

介護事務に向いている人について解説します。

5.1 パソコンスキルがある

高度なパソコンスキルは必要ありませんが、基本的なタイピングは出来た方が良いでしょう。また、書類などを作成する際にWord・Excelを使用したり、施設によってはGoogleスプレッドシートやGoogleドキュメントを使用している場合もあるので基本的なことはできた方が良いでしょう。また、連絡の手段として電話以外にもメールやLINE WORKSなどを使用することも多いのでこれらのソフトも使えるようにしておいた方が良いでしょう。あと、ワイズマンなどの介護ソフトも使用することがよくあるため使い方についてはマスターしておく必要があります。

5.2 コミュニケーション能力がある

介護事務では窓口業務や利用者・入居者の家族からの質問に答えることもあるためコミュニケーション能力が求められます。

5.3 事務作業・じっくりと集中して業務に取り組むことが苦手でない

机上で行う業務が苦にならないだけでなく、集中して業務に取り組む必要があります。特に介護報酬の請求業務ではじっくり集中して行う必要があり、気が散ってしまうと入力ミスなどから計算ミスをしてしまうことがあります。

5.4 介護保険制度に関心がある

介護保険制度は定期的に改正されるため、その都度、知識を更新していく必要があります。よって、介護保険制度に関心があり、常に学ぶ姿勢が無ければ難しいでしょう。

まとめ

介護事務だけの業務を行うことは少なく、介護現場で手伝ったり、場合によっては介護職員初任者研修の取得をさせて、介護士と同じような業務をさせられることもあります。よって、「介護士の仕事は大変だから介護事務で楽な仕事を・・・」と考えて就職・転職すると上手くいかない可能性があり、たとえ介護事務員として就職・転職できたとしても「こんなはずでは・・・」と後悔してしまう可能性があります。

介護事務の仕事に関心のある人は「事務仕事以外にも様々な業務を経験し、より幅広い専門知識も身に付けたい」との姿勢で取り組んでいった方が良いでしょう。

参考サイト