認知症について-代表的な4つの種類とその特徴について解説

介護の仕事をしていると認知症利用者への対応というのに苦労するというのはよくあると思います。ヤスベーも認知症利用者への対応に苦労することはよくありました。入浴への声掛け、帰宅願望が出てきたときの対応、不穏時の対応などで苦労することはよくあり、「同じ利用者でも前回上手くできた方法で対応してみても今回は上手くいかなかった」ということもよくありました。

認知症の方への対応はベテラン介護士でも難しく、対応方法にこれといった正解がないため悩んだり苦労する介護士は少なくないと思います。認知症の方への対応はある程度経験が無いと難しい面もありますが、認知症についての知識が有るか無いかでも変わってくると思います。

この記事では認知症について基本的なことを解説していこうと思います。

認知症とは

認知症とは脳の病気や障害などさまざまな原因で脳の細胞が死んだり、働きが悪くなったために記憶力や判断力などに障害が起こり日常生活などに支障が出ている状態のことをいいます。

★認知症の種類について

認知症の種類はいくつかありますが、代表的なものとしてアルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つがあります。4つの認知症については「4つの代表的な認知症について」の章で詳しく説明します。

★認知症の症状について

認知症の症状には「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つがあります。

●中核症状

認知症で脳が委縮し脳の機能が低下することによって直接的に起こる記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、失行・失認・失語などの認知機能の障害を中核症状と言います。

・記憶障害

最近のことが覚えられない、さっき聞いたことを思い出すことが困難になってきます。進行すれば覚えていたことも忘れていくようになります。

・見当識障害

日時、場所、人物などが分からなくなります。季節感も薄れるため季節に適さない服装をすることがあります。さらに進行すると自分の家族などの生死にかかわる記憶や自分と家族の関係も分からなくなります。
*見当識とは、時間、場所、人物など基本的な状況を把握すること

・理解・判断力の低下

理解力や判断力、情報を処理する能力が低下し、普段と違うことが起こると対応できなかったり、早口で話されると理解できず混乱するなどの症状が起こります。

・実行機能障害

物事の計画を立てることや調理を並行して進めること、段取りよく行動すること、予想外のことに対応することなどが困難になります。

・失行

服の着方、ハサミなどの道具の使い方など日常生活で行っていた動作が出来なくなります。

・失認

目の前の物が見えていても、それが何なのかを認識できなくなります。例えば目の前にリンゴやみかん、バナナなどの果物があっても、どれがリンゴか分からないといったことになることがあります。

・失語

言語を司る脳の部分が正常に機能しないために、読む、書く、聞く、話すという行為が上手くできなくなります。

●行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状(BPSD)は、中核症状によって引き起こされる二次的症状で、周辺症状とも呼ばれています。幻覚、妄想、興奮、不穏、徘徊、暴力、暴言、うつ状態、不眠、意欲低下、拒食、摂食障害などがあります。

行動・心理症状が起これば介護者に掛かる心的負担や身体的負担が大きくなりますが、行動・心理症状は適切な対応、ケアによって軽減できます。行動・心理症状の適切な対応、ケアについては他記事で解説しようと思います

物忘れと認知症の違い

年齢を重ね物忘れが多くなると「自分は認知症でないか」「親が認知症でないか」と不安に感じることがあるでしょう。

「どのようなポイントで認知症と物忘れを判断するべきなのか」で悩んだときには、「忘れている対象」に注目して見るとよいでしょう。エピソードの一部分のみを忘れている場合には、「物忘れ」と判断できます。しかしエピソード全体を忘れてしまうような場合には、「認知症」が疑われます。

例えば、物忘れの場合は「朝食は食べたけど、何を食べたか忘れた」という状態ですが、認知症の場合は朝食を食べたことを覚えていないという状態になります。

また「認知症」には、症状が進行し、さらに本人に「忘れている」ということを自覚させることが困難であるという特徴があります。

物忘れと認知症は、個人差が大きい問題でもありますが、これらのポイントに注目し、総合的に判断することをオススメします。

4つの代表的な認知症について

認知症にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして、アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4つがあります。

★アルツハイマー型認知症

現在、認知症でもっとも多いのが、アルツハイマー型認知症で男性より女性の方が多いという特徴があります。

アルツハイマー型認知症の原因は、諸々の説がありますが、脳内にアミロイドβが過剰に溜まることが最も有力であると言われています。脳内にアミロイドβが蓄積していくと脳が委縮します。なぜ脳内にアミロイドβが蓄積してしまうのかは分かっていませんが、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの基礎疾患があるとアミロイドβが溜まりやすくなり、発症するリスクが高くなります。また睡眠不足やストレス、歯周病、不健康な食事、喫煙などもアルツハイマー型認知症の発症のリスクを高めてしまう要因となります。

記憶障害を発症することが多く、比較的長い時間をかけて、確実に症状が進行していき、ある程度症状が進行した段階で人格の変化も起こります。後期になると、会話そのものが難しくなり、また寝たきり状態になってしまうケースも多くあります。

アルツハイマー型認知症を完全に治療する薬はありませんが、進行を遅らせる薬はあります。

★血管性認知症

血管性認知症は脳梗塞や脳出血などの脳卒中(脳の血管障害)が原因で起きる認知症です。高血圧や糖尿病、脳動脈硬化を指摘された経験がある方や、喫煙習慣がある方は、特に血管性認知症に注意した方が良いでしょう。

血管性認知症では、記憶障害や見当識障害、実行機能の障害などアルツハイマー型認知症やその他の認知症でもみられる症状がみられます。また、歩行障害や手足の麻痺、パーキンソン症状などの身体的な症状が生じたり、抑うつや感情失禁、夜間せん妄などがみられることもあります。脳梗塞や脳出血などで障害された脳の部位に応じてさまざまな症状が生じます。
*感情失禁…感情をコントロール出来ず、突然泣きだしたり笑い出したりする

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中の再発予防が重要です。脳卒中の再発を予防するためには血液をサラサラにする薬や降圧剤などが用いられます。また、バランスの良い食生活や適度な運動、禁煙、禁酒などの生活習慣の改善も重要になってきます。

★レビー小体型認知症

レビー小体という異常なタンパク質が脳に蓄積されることによって引き起こされる認知症で、他の認知症と比べると比較的早く進行していきます。女性よりも男性に発症が多い傾向があります。

レビー小体型認知症の症状は主に認知機能の変動、幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害、自律神経症状があります。

●認知機能の変動

日や時間帯などによって意識がはっきりしている時とボーとして反応が乏しく理解力や判断力などが低下している時が交互に入れ替わります。

●幻視

幻視とは実際には無いものが見えているという症状です。本人には「あそこに人がいる」などというように生々しく見えます。

●パーキンソン症状

振戦(手足がふるえる)、筋肉が硬くなる、動作が遅くなる、体のバランスが悪くなり転倒しやすくなるなどパーキンソン病と同じような症状が起きます。

●レム睡眠行動障害

就寝中に大声で叫んだり、暴れたりする症状です。浅い眠りのレム睡眠中にこのような症状が起こります。

●自律神経症状

立ちくらみや便秘、頻尿、異常な発汗など体の不調がみられます。

レビー小体型認知症を治す薬はありませんが、進行を遅らせる薬はあります。また、パーキンソン症状にはパーキンソン病の治療で使われる薬が有効です。

★前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは脳の一部である前頭葉や側頭葉が委縮して起こる認知症です。そのほかのタイプの認知症と比較して、若い世代にも多い認知症です。

最近の研究では、タウたんぱくやTDP-43などのたんぱく質が発症に関連していると言われています。

前頭葉は思考や人格、理性、判断、社会性などを司り、側頭葉は記憶や聴覚、言語、感情などを司ります。

 前頭側頭葉型認知症を発症すると万引きや痴漢行為などをしてしまったり、周囲や身なりに無頓着になるなど社会性が欠如してしまいます。また、同じ行動を繰り返す、抑制が聞かなくなり暴力をふるう、言語障害、共感・感情移入ができないなどの感情の麻痺、自発性の低下などの症状が表れます。認知症が進行すると、社会性に欠けた行動や暴力などは減り、意欲の低下や無関心などの症状が強くなってきます。

現在のところ、前頭側頭型認知症を根本的に治す治療方法は無く、対症療法や作業療法などを行っています。

その他の認知症について

4つの代表的な認知症以外にも若年性認知症、アルコール性認知症、神経原線維変化型老年期認知症、嗜銀顆粒性認知症、正常圧水頭症等があります。

★若年性認知症

65歳未満で認知症を発症した場合は若年性認知症とされ、発症する平均年齢は51歳前後です。若年性認知症も血管性認知症とアルツハイマー型認知症が占める割合が多いと言われています。

★アルコール性認知症

アルコールを大量に摂取し続けたことにより脳梗塞などの脳血管障害や、ビタミンB1欠乏による栄養障害などを起こし、その結果発症する認知症です。高齢者だけでなく、若い世代にも見られます。

★神経原線維変化型老年期認知症

80~90歳の方に見られることが多い認知症で記憶障害がゆっくりと進行していきますが、他の認知機能や人格は保たれます。

★嗜銀顆粒(しぎんかりゅう)性認知症

嗜銀顆粒性認知症は嗜銀顆粒と呼ばれる物質が脳に蓄積して発症します。症状は記憶障害や頑固になる、怒りやすくなる、興奮しやすくなるなどです。

★正常圧水頭症

頭の中には毎日脳脊髄液が作られているが、この脳脊髄液が何らかの原因で異常に頭に溜まってしまい、脳を圧迫して発症して障害を起こす病気を水頭症といいます。正確には正常圧水頭症は認知症ではありませんが、正常圧水頭症でよく見られる症状は、その他の認知症と似た症状なので、詳細な検査が行われないと診断できません。主な特徴は、歩行障害、精神活動の低下、排尿障害があります。早期に治療を始めれば症状を改善することも可能と言われています。

認知症の対応について

自分の親など家族で「もしかしたら認知症では」と感じたら、まずは医療機関に受診することをおすすめします。そして、認知症と診断された場合は、認知症の家族が住んでいる市町村の役所へ要介護、要支援の申請を行い、介護認定を受けた場合は介護サービスの利用が開始されます。これについては他記事で詳しく解説します。

介護士として施設で働いておられる方、親など家族が認知症でどのように対応・接すればいいのか悩んでおられる方は少なくないと思います。認知症の方への対応はむつかしい面もありますが、主なポイントは相手を否定せずに共感することが大切になってきます。また、自尊心を傷つけないように注意していかなければなりません。認知症の方への接し方などについても他記事で詳しく解説します。

認知症のケア技法でユマニチュードというのもあります。これについても他記事で詳しく解説します。

まとめ

介護の仕事をする場合は認知症の方への対応は避けては通れません。また、今後は家族に認知症高齢者がおられる人も増えていくことが予想され、介護の仕事をしている人以外の人も認知症が身近なものになってくることが考えられます。

もしもの時のために認知症について勉強しておけば役に断つかもしれません。

参考サイト