介護士の将来性について

これから介護業界で働こうとしておられる人、もしくは介護業界で働いておられる人の中には介護士の将来性について気になる方がおられると思います。「人材不足」や「要介護者の増加」「賃金の問題」などの課題を思い浮かべる人も多く、介護士として本当に長いこと働くことは出来るのかと心配される人も少なくないと思います。

また、AIやロボット技術の発展で介護の仕事も影響を受けるのではないかと考えておられる人もおられると思います。

この記事では介護士の将来について介護業界などの現状と共に考えてみたいと思います。これから介護業界で働くかどうか考えておられる人は参考にしてみてください。

1.介護業界の現状

介護業界の現状については課題も多く、解決することが一筋縄ではいかないものが多くあります。

1.1 人手不足

介護業界では人手不足が大きな課題となっています。人手不足から介護士の負担増や労働環境の悪化により離職率の増加につながり、さらには介護サービスの低下の低下にもつながります。そして、経営状態の悪化など負の連鎖につながってしまいます。

少子高齢化の影響で介護を必要とする人が増えているのに対して、労働人口は減少しているため介護業界では人手不足が加速しています。また、介護業界では求人を出しても応募者がなかなか来ないため人材を確保できないといった現状もあります。従って、少ない人手を介護施設が取り合っているような状況になっています。

その他、人間関係の問題や介護業界に対しての悪いイメージ、離職率の高さなども人材不足の原因になっています。

1.2 要介護者は増加傾向

高齢化により要介護者(介護が必要となる人)は年々増加し続けています。内閣府の「令和3年高齢社会白書」によると、日本の高齢化率は28.8%となっており、65歳以上人口は3619万人となっています。

そして、2040年には65歳以上の高齢者の人口がピークを迎えます。それに伴い健康寿命を超えて要介護状態となる人が今後さらに増加していくことが予想されます。

1.3 賃金

介護士の賃金は介護施設の規模や施設形態、利用者・入居者の要介護度などによって差はありますが、厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、常勤の介護職員の平均給与(基本給に各種手当とボーナスなどの一時金を含めたもの)は31万6610円となっています。

介護施設の収入源は介護施設が提供した介護サービスの対価として国や市町村から支払われるお金で、「介護報酬」と呼ばれています。介護報酬の金額は利用者・入居者の要介護度や提供している介護サービスなどによって決まります。

介護士の賃金がなかなか上がらない理由の1つとして、介護報酬には上限が定められており、施設側の努力だけでは介護士の賃金を上げることが出来ないといったものがあります。

1.4 離職率

介護労働安定センターの調査によると、2021年度の介護職の離職率は14.1%です。介護業界の離職率は年々減少傾向にあり、2010年度の離職率は17.8%あったことから実際は離職率が改善されつつあります。

離職率が改善しつつある理由として、待遇や労働環境が改善しつつあることなどがあります。

ちなみに、厚生労働省の調査によると、2021年度の全産業を平均した離職率は13.9%となっており、介護職と大きな差はありません。

2.介護士の将来性は

介護業界には多くの課題がありますが、介護業界や介護士には大きな将来性があります。

2.1 介護士の需要

現在、日本では高齢化の影響で高齢者の増加に伴う要介護者の増加と少子化の影響による若年者の減少による労働人口の減少で介護業界は人手不足となっています。

また、2021年7月に厚生労働省が発表した第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると2040年度には約69万人(2019年の介護職員の人数)の追加が必要となっています。

こうした状況から、介護業界の人手不足がすぐに解消されるとは考えにくく、今後も介護士の需要は高い状態が続くことが予想されます。

2.2 処遇の改善

介護士の給料は安いという話はよく聞きますが、政府も介護業界の人材確保のために処遇の改善を進めています。介護保険には処遇改善加算という制度があり、介護士の処遇を改善した介護事業所には加算がつき介護報酬が多く得られるシステムがあり、介護事業所も介護士の処遇を改善しようと考えるようになりました。

また、2019年10月からは勤続10年以上の介護福祉士をはじめとする経験・技能がある介護職員の給料を月額8万円、又は年収440万円まで改善する「介護職員等特定処遇改善加算」の制度が設けられました。

このように介護士の待遇も少しずつ改善しつつあります。

2.3 労働環境の改善

国は介護業界の人手不足や労働環境の改善のために、外国人の採用や介護用ロボットの導入、ICTの活用などを推進しています。また、近年では育児・介護休業法の改正によって子育てや介護と仕事を両立しやすいように1日当たりの労働時間を原則6時間以下とすることが可能となり、出産や子育てをしながらも介護士として働き続けやすくなりました。

国や介護業界も介護士の負担を軽減するために労働環境の改善に取り組み、介護の仕事の悪いイメージを払拭するように目指しています。今後も労働環境は徐々にではあるが改善されていくと予想できます。

2.4 介護では人間にしかできない仕事がある

介護業界ではロボットやAIの活用により仕事が奪われる心配は低く、むしろ、介護士の労働環境の改善に大きく貢献する可能性があります。よって、介護士は人間にしかできない仕事に集中することができ、介護サービスの向上や介護士の負担軽減につながる可能性があります。

AIやロボットには利用者・入居者とコミュニケーションを取ることはまだ困難であり、ある言葉を言われてもその言葉の裏にある本当の感情を読み取ることは難しいといわれています。利用者・入居者の心情に寄り添ったケアというものは人間でなければできません。

3.介護士になるには

介護士の現状と将来性を考えて、介護業界で働こうと思う人もおられると思います。

無資格、未経験でも介護士を目指すことは可能ですが、まずは介護職員初任者研修を取得し、その次に介護福祉士実務者研修を取得すると良いでしょう。介護福祉士実務者研修を取得した上で3年以上の実務経験があれば、介護福祉士試験を受けることが可能になります。

介護福祉士の資格を取得すると基本給が上がったり、資格手当なども支給されます。また、転職する場合も有利になります。また介護福祉士として実務経験を5年以上積めばケアマネージャーの試験を受けることも可能になります。

介護業界への転職を考える場合は転職エージェントの利用をおすすめします。

まとめ

今回は介護業界の現状をふまえ、介護士の将来性について解説しました。介護業界は依然として課題が多く解決も一筋縄でいかない部分もありますが、国なども介護士の労働環境や処遇の改善に取り組み、徐々にではあるが介護士の働く環境や賃金は改善しつつあります。

ただし、介護業界で働く場合は施設選びがとても重要になってきます。残念ながら介護業界でもブラックな施設というのは存在します。長く勤めようと思えば、自分の条件に適合した施設を見つける必要があります。

介護業界で働くことを決心された方が1人でも多く満足できる就職・転職が出来ればと思います。

参考サイト