介護職ってどうなの。介護業界で働くメリット・デメリットとは

介護業界といえば「給料が安い」、「大変そうだ」といったネガティブな印象を持っておられる人も少なくないと思います。また、介護業界への就職・転職を考えておられる人の中にも、「本当に介護業界でいいのか?」と悩んでおられる人もおられると思います。

介護業界へ後悔無く就職・転職する場合、自分の適性だけでなく、介護の仕事について良い部分と悪い部分などについてもしっかり考慮した上でどうするのか決める必要があります。この記事では介護業界で働くことのメリットとデメリット、介護業界のやりがい・魅力などについて解説します。

1.介護士の今後の需要について

今後は人工知能やロボット技術の発展で無くなる職業があると言われており、介護業界で働くかどうか迷っておられる人の中には、「今後の介護士の需要はどうなのか」と気にしておられる人もおられると思います。

総務省の統計によると65歳以上の高齢者の人口は2021年9月時点で約3640万人で過去最多となっており、総人口に占める割合も29.1%なっており、過去最高となっています。そして、高齢者の増加はまだまだ続き、2040年頃にピークを迎えると言われています。

そうした状況であるにも関わらず現在も介護士不足が続いており、2040年には現在よりも介護士が約69万人の追加が必要になると推計されています。また、介護の仕事は人工知能やロボットなどにはできない部分もあります。よって、今後も介護士の求人については心配ないと言えるでしょう。

2.介護職の仕事内容

介護職の主な仕事は加齢により体力や身体機能が落ちてきた高齢者に対して、その高齢者の尊厳を大切にしつつ生活の質の維持や向上を図りながらお世話をすることです。

以前は「親の介護は家族や子供がするもの」という考えがありました。しかし、平均寿命が大幅に伸び、少子高齢化が急速に進み、核家族化などが進んだことにより、「家族や子供で介護をする」ということは困難な状況になってきました。そうしたことにより、現在は親などの介護について、介護サービスを利用し、介護施設などの助けをかりるというのが一般的になりました。

介護施設には様々な形態があり、グループホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などのような入所施設があれば、デイサービスやデイケアなどの通所施設もあります。介護施設には様々な形態がありますが、介護士の主な仕事は入浴や排泄、食事など利用者の身体に直接触れる身体介護と料理や掃除、洗濯といった生活援助があります。また、管理職などの役職がついたり、リーター的な役割を与えられれば介護施設で他の介護士の指示や指導をしたりするなどマネージメント的な仕事も行います。その他、ケアプラン作成に必要なサービス担当者会議に出席したり、介護施設の利用者・入居者の家族に対して介護サービスの説明・近況報告などの仕事も行ったりします。

3.介護職のメリット

介護職の主なメリットは「就職・転職がしやすい」、「家族が介護が必要になった時に役立つ」、「将来性がある」で、これらについて解説します。

3.1 就職先が多く、他業界と比べると就職・転職先に困らない

介護業界では現在も介護士不足が続いており、今後は介護士の需要がより増してきます。介護施設も年々増加傾向にあり、求人や働き先はたくさんあり、不況や近年のコロナ禍の影響もあまり関係なく、比較的就職・転職がしやすい業界であると言われています。また、他の業界では未経験転職が難しくなる30代後半以降の人も介護業界では比較的転職がしやすくなっています。

介護福祉士を取得しているとさらに転職は有利になります。よって、より条件の良い介護施設への転職も可能になります。

3.2 自分の両親を介護するようになった時に役立つ

祖父母や両親が元気である場合は、介護の知識や技術を活かす機会はほとんどありません。しかし、現在は平均寿命が伸びており将来的には祖父母や両親の介護が必要になる可能性は高くなります。介護業界に携わっていない人でも将来的には介護のことについて考えなければならない機会が出てきます。そうしたときに介護の仕事で得た実務技術や認知症高齢者への対応方法などが役立ってきます。

また、利用できる介護制度について知識を持っておくと、祖父母や両親の介護が必要になった時に仕事を辞めることなく適切な介護サービスを利用し、介護と仕事を上手く両立させることができます。

3.3 将来性がある

介護業界では介護士不足が続いており、今後も介護士の需要は高い状態が続くことが予想されます。そうしたことから、政府も介護業界の人材確保のために処遇の改善を進めており、処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算などの制度を設け、介護士の処遇を改善しようとしています。

また、労働環境の改善のため国は介護業界の人手不足や労働環境の改善のために、外国人の採用や介護用ロボットの導入、ICTの活用などを推進しています。

その他、利用者・入居者の心情に寄り添ったケアというものはロボットやAIには難しく、人間でなければできません。逆に介護業界にロボットやAIを活用することにより、介護士の労働環境の改善に大きく貢献する可能性があります。よって、介護士は人間にしかできない仕事に集中することができ、より良い介護サービスが提供できるようになる可能性があります。

4.介護職のデメリット

介護職のデメリットとして「給与が安い」、「勤務時間が不規則・夜勤がある」、「肉体的・精神的にきつい」といったものがあり、多くの人が介護職についてこのようなことについてネガティブな印象を持っていると思います。

4.1 他業界と比べて給与が安い

介護士の給与は全産業と比べると少ない方にあり、その理由の1つに「無資格者の賃金を安く抑えられていること」があります。また、国家資格である介護福祉士を取得していても、他の国家資格の職業に比べると、まだまだ給与は低いのが現状です。

ただし、政府は処遇改善加算や介護職員等特定処遇改善加算などの制度を設けるなどして、介護士の処遇を改善しようとしています。

4.2 勤務時間が不規則・夜勤がある

入所施設へ就職・転職するとシフト勤務や土日祝日出勤、夜勤などがあり生活リズムが不規則になってきます。ただし、デイサービスやデイケアなどの通所施設は勤務の時間帯が一定で夜勤は無く、日曜日(ただし、土曜日、祝日が休みの施設は少ない)が休みの施設は多くあります。どうしても我慢が出来ない場合は、デイサービスやデイケアなどの通所施設へ転職する方法や仮眠が取れるホワイトな入所施設へ転職する方法もあります。

4.3 肉体・精神に負担がかかる

介護は肉体労働が多いため体に負担がかかりやすくなります。よって、腰や膝を痛めてしまうことがあります。また、認知症高齢者の対応でストレスがたまり、精神的に病んでしまうこともあります。

ただし、介護の技術を習得を身に付けることで肉体的にかかる負担を軽減することは出来ます。肉体的にどうしても厳しい場合は管理職などのマネージメント系の業務を目指すなどの方法もあります。

また、ユマニチュードなどの技術を身に付けることで認知症高齢者への対応が改善できるようになることもあります。

5.介護の仕事の魅力・やりがいとは

介護の仕事は肉体的にも精神的にもきつい仕事であることは確かです。給与や労働環境などについても徐々に改善しつつありますが、それでもまだまだな部分もあります。

利用者・入居者についても気難しい人、相性が合わない人などあり、なかなかうまくコミュニケーションをとることができない時もあります。

大変そうな介護の仕事ではありますが、介護士をしていて良かったなあと思えることは利用者・入居者の笑顔が見られた時であり、「ありがとう」といった言葉をかけてりただいた時であり、信頼・頼りにしていただいた時です。

この記事の作成者は元々介護の仕事をしたかったわけではありませんでした。介護業界で勤め始めた時は長くは続けられないだろうと思っており、「何度も辞めたい」と思うことがあり、何度もつらい思いもつらい思いもしてきました。そうしたときに心の支えとなったものは、利用者・入居者の笑顔や感謝の言葉などでした。

介護の仕事は大変な部分もありますがそれ以上に魅力的な部分もあります。

6.介護業界で働くなら介護福祉系の資格取得を

介護業界へは無資格でも就職・転職をすることはできます。しかし、キャリアアップや給与アップ、より良い施設への転職、仕事の幅を広げるためには介護福祉系の資格を取得することをおススメします。

6.1 介護職員初任者研修

介護業界へは無資格でも就職・転職できる施設はあります。しかし、無資格者の場合は有資格者が監督している場合のみ身体介助を認めている施設も少なくありません。よって、無資格のままでは可能な業務は限られ、介護技術の向上やキャリアアップすることなどが難しくなります。よって、無資格者はまず介護職員初任者研修の取得をおすすめします。

介護職員初任者研修を身に付けておけば、「介護に必要な基本的な知識とスキルを身につけている」という証明になります。介護職員初任者研修は専門の講座を提供しているスクールにて、決められたカリキュラムを受けることで取得できます。

6.2 介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は介護職員初任者研修の上位資格で、実務経験ルートで介護福祉士資格を目指す場合は必須となる資格です。介護福祉士実務者研修では介護職員初任者研修よりも踏み込んだ内容について学べます。

介護福祉士実務者研修と介護職員初任者研修には重複する内容が少なくないため、介護職員初任者研修を取得しておけば受講を免除される科目があります。受講期間や費用を大幅に節約できます。

6.3 介護福祉士

介護福祉士は国家資格であり、これを取得すれば「国が定めた基準を満たす介護福祉サービスに関する知識や技術を身に着けている」という証明になります。介護福祉士を取得するメリットとして「給与アップ」、「キャリアアップ」、「転職に有利」といった面があります。介護業界で働く場合は取得しておきたい資格になります。

介護福祉士を取得する方法として「実務経験ルート」と「養成施設ルート」と「福祉系高等学校ルート」の3つのルートがあります。試験は毎年1月頃に筆記試験があり、3月頃に実技試験が行われています。試験の合格率は6~7割前後となっており、他の国家資格と比べると合格のハードルは比較的低めとなっています。

6.4 ケアマネージャー(介護支援専門員)

ケアマネージャーは国家資格ではなく公的資格であり、介護を必要とする人のため、その状況に応じたケアプランを作成します。介護福祉士からのキャリアアップ先としても人気の資格です。介護福祉士などの国家資格取得後5年以上の実務経験が求められますが、収入アップにも役立ちます。

ケアマネージャーになるためには、まずは「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格しなければ「介護支援専門員実務研修」を受講することは出来ません。「介護支援専門員実務研修」を受講し、都道府県への登録を行うことで「介護支援専門員証」が交付されます。また、ケアマネージャーは5年ごとに資格の更新を行う必要があり、更新に必要な研修を受講しなければなりません。

介護支援専門員実務研修受講試験の合格率は2割前後となっており、介護福祉士よりも難易度は高くなっています。

まとめ

この記事では介護業界で働くメリットとデメリットについて解説してきました。「給料が安い」、「肉体的、精神的に大変そうだ」といった印象を持っておられる人も少なくなく、確かに大変な仕事ではあります。しかし、利用者・入居者の笑顔や感謝の言葉が介護士のやりがいになっていることも確かです。

また、国や介護業界も介護士の待遇や労働環境を改善しようと様々な対策を行っています。まだまだ課題は多く残っていますが、少しずつではありますが介護士の待遇や労働環境は改善しつつあります。

介護業界で働くかどうか迷っておられる人にこの記事が参考になれば幸いです。

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