職場の人間関係で悩む人は少なくないと思います。この記事では職場の人間関係で悩む理由や対処法などについて解説します。
1.職場で人間関係の悩みが生じる理由、ストレスを感じる要因、ストレスを感じやすい人の特徴
仕事をするうえで、避けて通れないのが「職場の悩み」です。どのようなポイントでストレスや不安を抱えてしまうのかは、個々によって異なるでしょう。とはいえ、多くの人が抱えているのは「職場の人間関係」に関する悩みです。
平成30(2018)年にエン・ジャパン株式会社が1万776人の労働者を対象にアンケートを採ったところ、「今までの職場で、人間関係に難しさを感じたことはありますか?」という問いに対して、なんと84%の人が「ある」と回答。また、転職経験がある人のうちの53%が「人間関係が転職のきっかけになったことがある」と答えています(※1)。職場における人間関係の悩みは、誰にとっても他人事ではないと言えるでしょう。
では、そもそもなぜ職場で人間関係の悩みが生じてしまうのでしょうか。その理由やストレスを感じる要因、特にストレスに対して注意が必要な人の特徴について解説します。
1.1 職場に人間関係の悩みが多いのは、関係を断ち切れずリセットしづらいから
職場で人間関係の悩みを抱えてしまう人が多いのは、「仕事」を理由に、さまざまな立場、考え、態度の人が集まるからです。プライベートであれば、「この人とは気が合わないな…」と感じたら、距離を置けるでしょう。お互いにほど良い距離感で、心地良い関係性を築けるはずです。
しかし、職場となるとそうはいきません。「この人が苦手…」と思っても、毎日顔を合わせなければいけませんし、社会人としてそれなりの対応を求められるでしょう。また、そこには「上司と部下」「先輩と後輩」「ライバル同士」「グループ派閥」など、さまざまな人間関係が複雑に展開されているのです。
たとえば、マネジメント能力の低い上司の部下になってしまうと、業務について一貫した指示をもらえない可能性もあります。また、「上司」という立場を悪用され、パワハラやセクハラを受けてしまうケースもあります。先輩と後輩の関係にも同じ問題が発生するリスクがありますし、些細な出来事がきっかけとなって、ライバルから嫉妬の目を向けられる恐れもあるでしょう。すでに派閥やグループができ上がっている場合、そこに所属しない人を排除しようとする動きが生まれる職場は少なくありません。
プライベートのときのように、「関係が悪化した相手とは距離を置く」ということができればいいのですが、仕事の相手となると難しいもの。特に相手が自分よりも上の立場にいる場合、「何も言えないまま、ただただ我慢し続ける」といった事態にもなりかねません。会社の相談窓口がしっかり機能していればいいのですが、残念ながらそうとは限らないでしょう。また、相談された会社としても、どうにもできないまま時間だけが過ぎていくようなケースが多く見られます。
結果として、「リセットするためには退職しかない」と追い込まれてしまう事例が多くなるのでしょう。仕事を変えることには経済的なリスクが伴うため、決して簡単な決断ではありません。人間関係の悩みを発端として、転職に関する悩みも抱えてしまう方がいます。
特に介護業界においては、人間関係の悩みを抱えつつ働いている方が少なくありません。介護の仕事で重視されるのは、ずばりチームワークです。考え方や仕事のペース、立場が異なる人がいれば、軋轢が生じやすいのでしょう。また、次のような条件が各々のストレスを助長し、人間関係の悪化に拍車をかけているようなケースも珍しくありません。
- 人材不足による激務
- 低収入に対する不満
- 利用者さんとの間のトラブル
1.2 ストレスを感じる具体的な要因8つ
私たちが仕事をするうえでは、具体的にどういった要因にストレスを感じやすいのでしょうか。人間関係にまつわるトラブル事例として、次の8つをご紹介します。
- 時と場合によって、上司の態度に差がある。
- 上司が気分屋で毎回言うことが変わる。
- 都合が悪くなると、すぐに責任転嫁される。
- ちょっとしたきっかけで、同僚の間で孤立してしまった。
- 同僚たちに陰口をたたかれている。
- 各種の嫌がらせを受けている。
- 部下が指示を聞いてくれない。
- グループ内の同調圧力が原因で、自分のしたい行動ができない。
「職場」という限られた場所でうまくやっていくためには、もちろん我慢も必要です。とはいえ、仕事となると、いやな思いをする頻度が上昇しがち。何度も繰り返され、改善しない状況にストレスを感じてしまう人が多いと言えそうです。
1.3 職場の人間関係にストレスを抱えてしまいがちな人の特徴5つ
同じ職場環境で働いていても、それぞれが抱くストレス量は異なるものです。どれだけ上司からいやみを言われても、まったく意に介さない人もいるでしょう。反対に、ちょっとした変化が原因で、多大なストレスを抱え込んでしまう人もいます。人間関係由来のストレスに対して特に注意が必要なのは、どのようなタイプでしょうか。5つの特徴をご紹介します。
1.3.1 【真面目な完璧主義である】
真面目で完璧主義な性格は、仕事をするうえで役立つ場面が多いでしょう。しかし、職場の人間関係に的を絞って考えた場合、必ずしも良い結果をもたらすとは限らないようです。
真面目な性格の人は、仕事をきっちりこなしがちです。手抜きや妥協ができないため、仕事の完成度は高め。一方で、他人にも100%を求めがちです。周囲の同僚や後輩、時には上司や先輩からも、けむたがられてしまう可能性があります。
「○○は必ず△△しなければならない」といったルールにこだわりすぎると、「他の人も同じようにやるべきなのに、全然しっかりやってくれない」といった不満につながってしまう可能性もあります。人間関係がギスギスしてしまいがちです。
1.3.2 【察しが良く、人の顔色をうかがってしまう】
察しが良く、人の感情の動きを読み取るのが得意な人も、職場のストレスに対して注意が必要なタイプです。通常であれば気付かないような些細なポイントにも気付いてしまい、それがストレスを抱える要因になってしまう恐れがあるでしょう。
たとえば、会話をしている同僚の目線が反れたとき、その事実から相手の感情を深読みしてしまうのがこのタイプの人。「どうして目線を反らしたのだろう?」「もしかして気に障ることを言ってしまったのかな?」と、どんどん不安を強めてしまいます。介護や看護、保育といった現場で働く場合、察しの良さは武器になるでしょう。しかし、人間関係のストレスについて考えると、むしろマイナスに働いてしまう場面が多いのです。
「同僚が自分の悪口を言っている気がする」「上司に嫌われている気がする」など、ネガティブな感情にとらわれてしまいがちなのも、このタイプの特徴です。実際にはそのような事実はなくても、周囲の顔色をうかがい、不要なストレスを抱えてしまう恐れがあります。
1.3.3 【人とのコミュニケーションに自信がない】
職場の人間関係にストレスを抱える方の中には、「もともと人とのコミュニケーションに自信がない」という方が多いものです。
次のようなタイプの人は、特に人間関係が悪化していなくても、「関係を持たなければならない」と考えること自体がストレスになってしまう可能性があります。
- 自分からみんなの輪に入っていけない。
- 人見知りをしてしまう。
- 積極的に他者と関わろうとしない。
人間関係の悩みを解決するためには、一般的にコミュニケーションが鍵と言われています。しかし、そのコミュニケーションそのものが、ストレスの原因になってしまうのです。過去のトラウマや、自分自身の苦手意識が状況を悪化させてしまうケースもあります。
1.3.4 【自分に自信が持てない】
自分に自信が持てない方も、人間関係におけるストレスを抱えやすいタイプと言えるでしょう。人とコミュニケーションを楽しむためには、ある程度自信を持ち、開き直ることも重要です。自分に自信が持てないと、周囲の意見に振り回され、心が疲弊してしまうリスクがあります。
たとえば、気の乗らない誘いを受けたときに、はっきり断れないのもこのタイプの人でしょう。「本当は、自分は○○したいのに…」という希望を言い出せないまま、相手の言うとおりに行動し、結局ストレスをため込んでしまいがちです。
1.3.5 【他人と比較して自分の駄目なところが気になってしまう】
「こうなりたい」という理想がはっきりしているタイプに多く見られるのが、他人と自分を比較してしまうケースです。どの職場にも、「仕事ができる優れた人」はいるものです。そうしたタイプと比較して、どんどん自己肯定感を失っていってしまいます。
「あの人に比べて自分は○○で全然駄目…」というネガティブな思考は、自身の行動や周囲とのコミュニケーションに影響を及ぼします。ネガティブな考えが人間関係を悪化させてしまうこともあれば、疑心暗鬼に陥って、自らストレスをため込んでいってしまう可能性もあるでしょう。
2.ストレスが仕事や体に及ぼす影響、症状
仕事で人間関係の悩みを抱えたとき、「よくあることだから」と我慢してしまう方は多いのではないでしょうか。確かに、「人間関係がいやだから」という理由で転職を繰り返していてはキリがありません。どの職場でも起こりうるトラブルだからこそ、「今の職場で、がんばって乗り越えよう」と決意する人も多いでしょう。
とはいえ、ストレスが仕事や体に及ぼす影響は、決して小さくありません。以下のような症状が出てしまう恐れがあります。
- 仕事のパフォーマンスの低下
- 食欲不振や吐き気、腹痛など
- 睡眠障害
- 多汗やめまい、聴覚過敏など
- 関節痛や片頭痛
- 気力の低下
- うつ病の発症
強いストレスを抱えた状態では、自身の本来のパフォーマンスを発揮するのは難しいでしょう。周囲の人の目を気にすれば、普段なら問題なくできる仕事が、難しくなってしまう可能性もあります。仕事でそのような状態になれば、自身の評価を落とすことになりかねません。
また、さらに状況が悪化すると、さまざまな身体症状が現れてきます。食欲低下や吐き気のほか、「仕事に行こうとするとお腹が痛くなってしまう」といった症状も典型的なものだと言えるでしょう。ストレス過多のときには、うまく眠ることも難しくなります。なかなか眠りにつけなかったり、眠りの途中で覚醒してしまったりと、睡眠の質が低下しがちです。
これらの症状が発現しても、「職場の人間関係によるストレスが原因」と気付けないケースが少なくありません。各種身体症状を無視し、状況を放置すれば、うつ病を発症してしまう恐れがあるでしょう。ここまで状況が悪化すると、その後の回復に長い時間が必要になってしまいます。
上記のような症状や、その予兆が見られたときには、ストレスの原因からうまく距離を取るのがおすすめです。残念ながら、自分がどれだけ努力しても、「合わない人」はいるもの。無理をせず、転職を検討するのもおすすめです。新たな環境の中で、新たな人間関係を構築していきましょう。
介護業界の場合、慢性的な人手不足から転職先を見つけやすいという特徴があります。また、職場の雰囲気は施設によって大きく異なるのも、ポイントの一つ。今の職場が駄目でも、次の職場なら安心して働ける可能性があるでしょう。転職エージェントなどを通して事前に職場を見学し、人間関係に不安がないことを確認したうえで、転職活動を進めていくのもおすすめですよ。
3.職場の人間関係の悩みやストレスを解消する方法
職場の人間関係で悩んでいざというときは、転職によるリセットが効果的です。それと同時に、自分自身のストレス耐性を高めていきましょう。
前述したとおり、職場の人間関係によってストレスをためやすい方もいれば、何をされてもどんな環境に置かれてもまったく気にしない方もいます。一概に「どちらのほうが優れている」とは言えません。ただ、職場の人間関係の悩みやストレスをうまく受け流せるスキルを身につけておいたほうが、自分自身が楽に仕事を続けられるでしょう。
人間関係の悩みを受け流し、適度にストレスを解消するためのコツを6つご紹介します。「職場の人間関係に振り回されがち…」という方は、ぜひチェックしてみてください。
3.1 「職場の人間関係は悪くて普通」と考える
人間関係に悩み、過度なストレスを抱えてしまう原因は、自身の心の中に潜む「理想」や「思い込み」にあるのかもしれません。まずは、ここから改革してみましょう。
職場で関わるのは、自分と気が合う人ばかりとは限りません。また、常に協力体制のもとで仕事ができるわけではなく、時に対立こそが求められる場面もあるでしょう。このような状況下において、まるでドラマのような円満な人間関係を維持していくのは不可能です。仕事さえ順調に回っていればいいのですから、思い切って「職場の人間関係は悪くて普通」と捉えてみてください。
「悪いほうが普通」と捉えられるようになれば、周囲の些細な言動に、いちいち傷つくことはなくなるでしょう。反対に、良い関係を築けたときの喜びは大きくなるはずです。
3.2 対人関係の三重円
「対人関係の三重円」とは、他者とほど良い距離感を保つためのテクニックです。自分を中心に置き、3つの円を描いてください。自分を中心に、最も近いところにある円が家族や恋人、親友などを示します。その外側に広がる2つ目の円が、友達や親戚など。そのさらに外側に広がっている3つ目の円に、職場の人間関係が含まれます。
一番外側に位置するのは、「仕事に影響がなければ、それだけでOK」と考える相手です。相手との関係性を意識して、過度に関わり過ぎない、気にし過ぎないことが大切です。
3.3 自分が改善すべきところについて考える(自分の考え方、自分の行動など)
職場の人間関係がうまくいかない理由を、常に「自分以外」に求めるのは危険です。時には自身の考え方や行動について、振り返ってみましょう。
自己中心的な振る舞いが増えれば、当然周囲からは反感を買うでしょう。チームワークを重視する職場であればなおさらです。自分の行動に思い当たる節がない場合は、心から信頼できる相手に状況を打ち明け、アドバイスを受けるのがおすすめです。
3.4 環境を変える
ストレスが強まり、自分ではどうにもならなくなってしまった場合は、ぜひ環境を変えるように意識してみてください。もちろん転職も選択肢の一つ。「そう簡単に仕事を辞めるわけにはいかない」という場合には、職場内での配置転換を希望するのがおすすめです。普段一緒に働く仲間が変われば、雰囲気もがらりと変わるでしょう。
どうしてもつらいときや、すでに何らかの困った症状が出ている場合には、休職も一つの方法です。どんな方法があるのか、じっくり検討してみてください。
3.5 悩んだときの相談先
職場の人間関係で悩んだときに、一人で抱え込むのはおすすめできません。ぜひ周囲に相談してみてください。次の相手であれば、安心して自分の本音を話せるでしょう。
- 家族
- 恋人
- 親友
一方で、より具体的な対策を求めるのであれば、次の相手に相談するのもおすすめです。
- 上司
- 会社の相談窓口
- 労働組合
何がどうつらいのかを、きちんと伝えられるように準備しましょう。
3.6 効果的なストレス解消法を見つけよう
できれば避けたいストレスですが、社会の一員として生きていく以上は避けられないものでもあります。だからこそ「ストレスを抱えないこと」よりも重要なのが、「抱えてしまったストレスを上手に発散すること」です。
効果的なストレス解消法は、人によって異なります。体を動かすのが効果的な方もいれば、趣味に没頭する時間に癒やされる方もいるでしょう。また、単純に「寝る」だけでも、ストレスは緩和されます。
ギャンブルやお酒に頼ってストレスを解消しようとするのはやめてください。ストレスが増えれば増えるほど、それらに依存するリスクが高まってしまいます。買い物や甘いもの、さらにはSNSに依存し、ストレス解消の手段としてしまうケースが増えているようです。さらなるトラブルを抱え込まないためにも、自分に合った適切なストレス解消法を探してみてください。
まとめ
職場の人間関係に悩んだら適切な対処を。
今回は、職場の人間関係に関するストレスについてまとめました。ストレスは、仕事をする以上、避けては通れないものですが、ストレスのため込み過ぎは危険です。すでに具体的な症状が出ている場合には、転職についても積極的に検討してみてください。自分にとって無理のない環境の職場で、自分らしく輝きましょう。