介護業界への就職・転職を考えた場合、まず気になるのは自分は「介護の仕事に向いているかどうか」であると思います。特に未経験で介護業界へ就職・転職する場合は気になるところです。
介護業界で働き続けていれば「介護の仕事が自分に向いているかどうか」は何となく分かります。しかし、介護業界で働いた経験が無ければ「向いているかどうか」は分かりません。実際に働いてみてから判断する方法もあるかもしれませんが、短期離職をすると後の転職活動に悪影響を及ぼす可能性があります。就職・転職活動前に「介護の仕事に向く人、向かない人」ということについての知識があれば、就職・転職が失敗しない可能性が高まります。
この記事では、「介護の仕事が向いている人、向いていない人」について解説します。
1.介護士に向いている人の特徴
介護の仕事に向いている人には「人と接することが好き」「コミュニケーション能力が高い」などいくつかの特徴があります。
1.1 人と接することが好き
介護の仕事は対人関係の仕事です。利用者・入居者やその家族とかかわるだけでなく、他の介護士やリハビリ職、看護師などの他職種の人とも連携を取りながら仕事をします。常に人がいる環境での仕事となるため、多くの人と接しながら仕事をするのが気にならない人、抵抗のない人には向いている仕事といえるでしょう。
1.2 コミュニケーション能力が高い
介護現場ではコミュニケーションも必須のスキルになります。利用者・入居者との信頼関係を築いていくためには、利用者・入居者の話をよく聞き、その時の体調や心情に寄り添った声かけや対応が必要になります。また、他の介護士やリハビリ職、看護師など他の職種の人と連携しながら仕事を進めていくのでコミュニケーション必須のスキルとなります。
1.3 気配りができる
利用者・入居者の中には控えめの性格のためなかなか自分の要望を言われない人がおられます。また、認知症高齢者は自分の想いなどをうまく伝えられない人がおられます。そうした人に「相手は何をしてほしいのか」「どうしたらよいのか」といったことを細やかに気付ける人は介護に向いています。また、入浴時や排泄時の介助に対しても尊厳を傷つけないように配慮する必要があります。
1.4 責任感がある
介護の仕事は人命にかかわってきます。介護に関わる業務はどれも大切な業務であり、利用者・入居者の健康や生活、命にかかわってきます。しかし、一人で抱えすぎるのも良くないので、分からないことは上司や先輩、同僚に相談して助けを求めることも大切です。
1.5 気持ちの切り替えが早い
介護業界で働いていれば、利用者・入居者から嫌なことを言われることがあります。また、認知症高齢者との対応でもつらい思いをすることがあります。精神的に落ち込んで暗い表情をしていると利用者・入居者にも伝わってしまいより悪い結果につながってしまう可能性があります。
また、利用者・入居者の言動にいつまでもクヨクヨしていると精神的に病んでしまうことがあります。気分をうまくリフレッシュする方法も大切になってきます。
1.6 礼儀をわきまえている人
利用者・入居者は介護士よりも年上で人生の先輩になります。あまり畏まった態度で接する必要は無いかもしれませんが、言葉遣いや接し方などにもある程度の礼儀が必要になります。また、相手を不快にさせる言動には充分に気を付ける必要もあります。
1.7 不規則な勤務、休日・夜間に働くことに抵抗がない人
グループホームや介護老人福祉施設などの施設では365日、24時間体制で運営しています。そのため、土日祝日、夜間、早番、遅番などの勤務があります。日勤、平日以外での勤務に対して抵抗がない人に向いていると言えます。
ただし、デイサービスやデイケアでは日勤のみで日曜日や年末年始が休みの施設もあります。ただし、土曜日、祝日が休みのデイサービスやデイケアはあまりありません。
1.8 勉強熱心な人
介護業界で必要とされる知識や役に立つ知識は常に新しくなりますので、常に学び続ける姿勢が必要になります。そのため、介護福祉関係の資格取得を通して知識や技術を身に付けていくことは大切です。また、身体介助について基本的な動作は同じであるが、利用者・入居者によって微妙に変えなければならないこともあります。よって、働きながらも学んでいく姿勢も大切になります。
2.【介護施設別】 向いている人の特徴
介護施設の形態によって、提供される介護サービスや業務は変わってきます。以下にそれぞれの介護施設の特徴と向いている人の特徴を解説します。
2.1 介護老人福祉施設(特養)
介護老人福祉施設は要介護度が3〜5と要介護度が高い入居者が多いのが特徴です。そのため、重度の人の身体介助をする機会が多くなります。また、医療的ケアを必要とする入居者もおられるため、介護技術のアップや医療的ケアの知識を身に付けたい人に向いています。
また、祝日や夜間勤務、不規則な勤務形態に対して抵抗の無い人に向いています。
2.2 介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設では医者や看護師、理学療法士などのリハビリ職などの他職種の人と連携しながら介護を行います。よって、介護士も他職種の人と仕事をする機会も多く、医療的ケアの知識を身に付けたい人に向いています。
また、入居者に対して在宅復帰を目指してリハビリや介護サービスを提供するため、目標に向かって何かを達成することが好きな人にも向いています。
2.3 グループホーム
認知症の人が家族のように暮らすグループホームでは、一人ひとりにしっかり向き合いながら焦らず、入居者を見守ることができる人が向いています。また、入居者と親密な関係を築きたいと思う人にも向いています。
2.4 デイサービス、デイケア
デイサービスやデイケアではレクリエーション活動や手芸などの趣味活動に力を入れているところが多いため、人を楽しませることや行事を企画すること、場の雰囲気を盛り上げることが得意な人に向いています。また、デイサービスやデイケアなどは基本的には夜勤は無く、勤務時間も固定されているのも特徴です。ただし、宿泊サービスを行っているデイサービスもあるので、そういう施設では夜勤やシフト勤務などをしなければならない場合もあります。
2.5 訪問介護
訪問介護は日中に業務をすることが多く利用者宅へ訪問し、身体介助や生活支援のサービスを行います。基本的には一対一での対応になり、時間的な融通が利きやすいことやや介護方法などについてを臨機応変に対応できるが、何かあれば一人で対応しなければならないこともあるため責任が重くのしかかることがあります。判断力のある人、一人ひとりとしっかり向き合って仕事をしたい人に向いています。
3.介護士に向いていない人の特徴
介護の仕事に向いていない人にもいくつかの特徴があります。介護士になるかどうかを決めるときにこちらの特徴も重要になるので良かったら参考にしてみてください。
3.1 自分のペースで仕事をしたい人、協調性が無い人
利用者・入居者の生活支援や身体介助を行うときは相手のペースで進めていく必要があります。また、認知症高齢者の場合は相手のペースを乱すと不穏になる場合もあります。
その他、介護の仕事は他の介護士や看護師などの他職種の人と連携し、協力し合いながら業務を行います。よって、自分のペースで仕事をしたい人や協調性のない人には向きません。
3.2 不潔な人、潔癖症である人
介護の仕事をしていれば排泄や入浴、食事などの介助を行います。介護士自身が不潔であれば利用者・入居者に対して感染症のリスクを高めてしまう可能性があります。また、清潔感のある身なりは利用者・入居者や他の職員に良い印象を与えます。
しかし、逆に潔癖症の人は排泄介助などの業務自体がストレスに感じる原因になる可能性があります。
3.3 せっかち・短気な人
高齢になるとどうしても動作は遅くなり、体も思うように動かなくなります。また、自分の想いをうまく伝えられない人や同じ話を何回も繰り返される人もおられます。そうした人に対して根気よく対応していかなければなりません。
特にすぐにカーとなりやすい人、キレやすい人は利用者・入居者に手を挙げてしまい、取り返しがつかないことをしてしまう可能性もあるので介護の仕事には就かない方が良いでしょう。
3.4 丁寧な仕事、細心の注意を払う仕事が苦手な人
介護の現場では、ちょっとしたミスが大事故に繋がったり、最悪死亡事故につながることもあります。常に細心の注意を払いながら業務に取り組む必要があります。時には二重にチェックする必要がある業務もあります。また、利用者・入居者の身体介助などに対しても丁寧に行わないと不快感を与えるだけでなく事故などに繋がることもあります。その他、利用者・入居者の些細な体調変化などにも注意する必要があります。
丁寧な仕事、細心の注意を払う仕事が苦手な人は大きなトラブルや重大な事故を起こしてしまう可能性があります。
3.5 体力や健康に自信が無い人
介護の仕事は力仕事を行うことが多く、不規則な勤務時間、夜間の仕事もあり、体力や健康に自信が無い人には向きません。ただし、デイサービスなどの通所施設では夜勤が無かったり、勤務時間が固定されているなど、介護施設の形態によっては勤務体制や入居者・利用者の要介護度が変わってくることがあります。よって、勤める施設形態によっては体力的・健康的な不安は解決できる可能性があります。
3.6 全体を見渡せない人
小規模で利用者・入居者が少なくこじんまりとした施設であれば、特に問題は無いのかもしれません。ただし、大人数の人が利用する施設では、視野を広く持ち、全体を見渡せるようになる必要があります。歩行の時、介護士などの介助が無ければ転倒のリスクがある人が自分一人で歩こうとされていた場合はすぐにそばに寄って介助する必要があります。また、離設による行方不明の可能性がある入居者・利用者が一人で外へ出ようとされた場合はすぐにそばに寄って対応する必要があります。
このように、視野を広げて、全体を見渡せなければ事故やトラブルが起きてしまう可能性があります。
4.向いている人じゃないと介護士にはなれないのか
向いていないと介護の仕事ができないのかというと必ずしもそうとは言えません。足りていないスキルや能力は働きながら身に付けていくことができます。介護業界で働きたいという思いが強ければ何とかなるかもしれません。
ただし、介護業界で働きたいとの思いが強くない人は考え直した方が良いかもしれません。また、介護に向く人の特徴がほとんど当てはまらない上に、向かない人の特徴に多く当てはまる場合も介護業界で働くことはおすすめしません。
5.介護職の仕事内容
介護の仕事内容は勤める勤務先によってその特徴は変わってきますが、自力で生活するのが困難な利用者・入居者の身の回りを介助、サポートします。主に食事介助、入浴介助、排泄介助、着替え、口腔ケアなどをおこないます。
また、心の健康を保つためレクレーションや趣味活動なども提供します。無資格でもできる業務はありますが、資格を取得するとスキルアップ、給与アップにつながります。
6.介護職でおすすめの資格
無資格でも介護の仕事はできますが、介護業界でスキルアップや給与アップ、転職を有利にしようと思えば介護福祉関係の資格を取得することをおすすめします。
6.1 介護職員初任者研修
無資格で介護の仕事を始めたのであれば介護職員初任者研修をおすすめします。受講条件は無く、基本的な知識を学ぶことができます。また、合格率も高く、夜間・短期・通信などの講座が開講されているため、働きながら資格取得を目指すことが可能です。
また、両親など家族の介護が必要になった時にも役立ちます。
6.2 介護福祉士実務者研修
介護職員初任者研修より上位の資格で、実務経験ルートで介護福祉士を取得をする時に必須となる資格です。介護職員初任者研修よりも踏み込んだ内容について学べ、基本的な介護知識だけでなく、たん吸引や経管栄養などの医療的ケアについても学ぶことができます。
また、介護職員初任者研修を取得しておけば介護福祉士実務者研修の受講を免除される科目があります。
6.3 介護福祉士
介護福祉士は国家資格であり、資格取得のためには「介護福祉士国家試験」に合格しなければなりません。介護福祉士を取得する方法として「実務経験ルート」と「養成施設ルート」と「福祉系高等学校ルート」の3つのルートがあります。
介護福祉士試験の合格率は6~7割と他の国家資格と比べると合格率は高めです。しっかり対策すれば充分合格できます。介護福祉士を取得すれば、「国が定めた基準を満たす介護福祉サービスに関する知識や技術を身に着けている」という証明になります。
介護福祉士を取得すれば、キャリアアップや給与アップ、転職が有利になるなどのメリットがあります。介護業界で長く働くのであれば取っておきたい資格です。
7.介護業界へ転職するには
介護業界に転職するにはハローワークや転職サイト、転職エージェントなどを利用する方法があります。介護業界は慢性的な人材不足が続いているため、転職自体は難しくないかもしれません。しかし、本当に転職を成功させるためには、転職先の施設と自分の理想がマッチしなければいけません。そのためには、職場の雰囲気、人間関係などについても知っておく必要があります。入職前に施設見学をすることをおすすめします。
また、転職エージェントを利用すれば、職場の人間関係や雰囲気など施設側に直接聞きにくいことを代わりに聞いてくれることもあります。
8.介護職で長く働くコツ
介護施設で長く働くためには、施設選びが重要になってきます。ブラックな施設に入職してしまうと心身ともに疲れ果て、人生を棒に振ってしまう可能性もあります。自分自身の適性や重視する希望などをよく考慮したうえで、自分にマッチした施設を選ぶ必要があります。
また、働き始めてからは笑顔でいることを心掛け、上司や先輩から注意されたり、アドバイスを頂いた場合は素直に聞くようにすることも大切です。分からないこと、あやふやなことはその都度確認し、同じミスをしないようにメモを取ることも重要です。利用者・入居者や他の介護士に嫌われると職場に居づらくなります。
まとめ
この記事では、介護士に向いている人について解説しました。介護業界では慢性的な人材不足のため、他職種と比べると就職・転職のハードルは低いと思われます。そのため、自分の適性をあまり考えず、充分に施設研究を行わなくても容易に就職・転職できてしまうことがあります。しかし、自分の適性や施設研究を充分に行わず転職をすると失敗するリスクが高くなります。
介護業界は他の業界と比べて就職・転職しやすい業界であるため、施設研究を充分に行い、自分が介護士に向いているかどうかをしっかり考えたうえで就職・転職することが大切です。