介護業界ではいじめが多いとのうわさを聞いたことがある人もおられると思います。また、新人がいじめの標的になってしまうこともあります。ただし、いじめが起こる理由や対策方法などを知っておくといじめを抑えられる可能性があります。
この記事では、いじめを受けてしまう理由といじめの種類、いじめに対しての対策方法、いじめが起きにくい施設・職場の特徴について解説します。
1.新人いじめが発生する理由
そもそもなぜ、介護現場でいじめが発生してしまうのか。いじめが発生してしまう理由について解説します。
1.1 ストレスが溜まりやすい環境
介護の仕事は肉体的にも精神的にも負担がかかることが多く、時間に追われることも多くあります。また、予期せぬ事態が起こることもあるため、常に心が休まらないことがあります。その他、利用者・入居者やその家族からの苦情を受けたり、上司や先輩職員などからパワハラを受けることもあります。
これらの厳しい環境からストレスが溜まり、ストレス発散のはけ口として新人などがいじめの標的にされることがあります。
1.2 派閥が存在する
長く働いている職員の間では、派閥が出来上がっていることがあります。特に新人職員は職場の人間関係や派閥について分かっていないことが多いため対処法が分からず無用な派閥争いに巻き込まれてしまうことがあります。
また、新人職員はすぐに職員の和の中に溶け込めていないために孤立してしまうことがあり、いじめの標的になってしまうことがあります。
1.3 新人を教育する余裕が無い
人材不足の職場や施設では、余裕が無いため、新人に対して教育や指導ができていないことがよくあります。よって、新人職員はいつまで経っても介護技術が上がることなく、業務を正しく理解することが出来ません。
また、新人を教育・指導を行うためのマニュアルが整備されていないため、教育・指導する職員ごとに言っていることや教えていることが違うため、新人職員も戸惑ってしまうことがあります。
そうしたことから、いつまでたっても介護現場で戦力になれないため、先輩職員などからの風当たりが厳しくなってしまうことがあります。
1.4 新人が即戦力として扱われる
ベテランの職員でも新しい職場での勤務は慣れないことやこれまでの職場との違いで戸惑うことがよくあります。ましてや未経験の新人職員となれば、分からないことだらけで戦力として活躍するには時間が掛かります。
しかし、余裕のない職場では新人を即戦力として扱ってくる場合があり、なかなか思い通りに働けない新人に対して「仕事が出来ない」と評価して、厳しく接してくることがあります。また、新人を即戦力として扱ってくる職場では新人に対しての教育や指導がきちんとできていないケースがあります。
1.5 職員同士のコミュニケーションが取れておらず人間関係が悪い
職員同士の人間関係が悪い職場では、ストレスを感じ、常にイライラしている職員が多く、そのはけ口として立場の弱い新人がいじめの標的にされてしまうことがあります。
また、人間関係の悪い職場では職員同士の意思疎通が出来ていないため、様々なトラブルが起きる可能性があります。職員同士で「言った、言わない」などとの言い争いが起こることがあり、そうしたトラブルに新人が巻き込まれてしまうと先輩職員からきつく当たられるようになることもあります。
1.6 新人の立場が弱い
入職して間もない新人は先輩職員から仕事について教えてもらう立場であるため、少々嫌なことを言われてもなかなか言い返すことができません。また、働き始めてからは親しい職員もいないことが多いため相談することがなかなかできません。そのため、嫌なことがあっても我慢せざるをえない状況になってしまいます。意地悪な職員が教育・指導するようになった場合はいじめがエスカレートしてしまう可能性があります。
2.介護現場で発生するいじめの種類
介護現場で発生する主ないじめについて解説します。
2.1 無視される
よくある典型的ないじめで、挨拶をしても返事が無い、仕事で分からないことを聞いても無視をされるなどといったことがあります。中には仕事に関する質問に答えないのに「物覚えが悪い」「仕事が出来ない」「分からないことがあっても聞いてくれない」などといったことを平気で言う人もいます。
2.2 悪口・陰口・嫌みなどを言われる
悪口・陰口・嫌味などもよくあるいじめです。特に派閥のある職場では起こりやすく、中には本人に聞こえるように言ったり、利用者・入居者の前でいう職員もいます。
また、新人職員は立場が弱く、戦力になるまでには時間もかかるため、悪口を言われる標的になりやすい面があります。
2.3 入浴、排泄介助など負担が大きい仕事を押し付けられる
入浴、排泄介助など負担の大きい仕事、大変な仕事を押し付けられる場合があります。本来、入浴、排泄介助などの仕事は誰か特定の職員に偏ることなく調整する必要があります。入浴、排泄介助などの調整は介護現場のリーダーが行うことが多いため、負担の大きい仕事ばかり押し付けられる場合はリーダーからいじめを受けているケースと言えるでしょう。
また、不穏な利用者・入居者の対応を頻繁に押し付けられる場合も嫌がらせを受けている可能性があります。
2.4 必要な情報を伝えない
介護現場では他職員との連携が重要になってきます。情報を共有しておかないと重大な事故やトラブルが発生する可能性があります。しかし、中には気に入らない人を困らせるために必要な情報を教えなかったり、重要なことを引き継がない職員もいます。
3.いじめへの対処法と対策
もし、いじめられた場合は我慢したり、泣き寝入りすることなく以下に紹介する方法で対処してみましょう。
3.1 いじめを受けている証拠を集める
いじめを解決するための方法として、まずはいじめを受けている証拠を集めることをおすすめします。上司や人事などに相談する場合、直接いじめ加害者に話をする場合などには特に証拠を集めておいた方が良いでしょう。誰かに相談したときに、いじめ加害者が「知りません」「私はいじめてません」などとシラを切らせないためにも重要です。また、いじめ加害者は業務上で重大なトラブルや事故を起こした場合、新人に罪をなすりつけようとすることもあるため、普段から証拠を集めておくと有利になる場合があります。
いじめの証拠を集める方法として可能であればボイスレコーダーやスマホなどを使用して音声や画像、映像を集めていくと良いでしょう。自分でスマホなどで動画を撮りにくい場合は信頼できる同僚がいれば頼んでみましょう。
また、いじめを受けた内容について日時と共に日記のように記録してみるのもおすすめです。その他、メールやLINEでいじめとも思える内容のものを送られてきた場合は証拠として必ず保存しておきましょう。
3.2 親しい同僚がいれば相談してみる
入職してすぐの職場ではなかなか親しい同僚はいません。もし、親しい同僚・信頼できる同僚がいた場合は相談してみると良いでしょう。特に上司に相談したりする場合は証言してもらえる可能性もあります。また、いじめの証拠集めでも協力してもらえる可能性もあります。
また、いじめなどの悩みについて相談できる相手がいればそれだけで気分が楽になることがあります。
3.3 上司や人事、施設長に相談してみる
上司や人事、施設長は職場でいじめがあった場合は放置せず、適切な対応をとる必要があります。場合によっては人事異動も希望してみると良いでしょう。また、いじめの証拠を示すとより効果があります。
3.4 本人に直接伝える
いじめ加害者は、おとなしそうな人、嫌味や嫌がらせをしても言い返さない人を選んでいることがあります。はっきりと言い返すことでいじめがおさまる可能性があります。また、勇気があれば、人前でいじめの証拠と共にいじめをやめてほしいことを伝えるとより効果的です。
3.5 転職する
上司や人事、同僚に相談しても改善しない。本人に直接言ってもいじめがおさまらない。そんな場合は転職することをおすすめします。また、ひどいいじめのせいで転職せざるを得ない場合は弁護士に相談するなどしていじめ加害者や施設を訴えることも考えておいた方が良いでしょう。もし、訴える場合は、いじめの証拠を集めておく必要があります。
4.いじめが無い施設や職場の特徴について
どうせ勤めるのであればいじめが無い職場で働きたいものです。以下にいじめが無い職場や施設について解説します。
4.1 職場・施設の雰囲気が明るい
雰囲気が明るい職場・施設ではいじめはほとんどありません。雰囲気が明るい職場・施設では利用者・入居者や職員の笑顔であふれ、明るい表情となっています。また、活気もあります。
逆に、何らかのトラブルや人間関係で問題のある施設・職場では職員はストレスを感じることが多く、表情は暗く、利用者・入居者に対してもあまりよい対応が出来ておらず、利用者・入居者の表情もあまりよくありません。
入職する前に、施設・職場の雰囲気を確かめるためにも見学しておくことをおすすめします。
4.2 上司や役員が一般の職員を大切にしている
上司やリーダーなど上の立場の人間がいじめを行っているケースがあります。上の立場の人間が部下に対してどんな対応をしているのか充分に注意しておく必要があります。採用選考の面接時に、職場の上司となりそうな人が高圧的な態度で対応してきた場合は要注意です。入職後も同じような態度で接してくる可能性があります。
4.3 新人や経験の浅い職員の教育や指導がしっかりしている
新人や経験の浅い職員の教育や指導がしっかりしている職場では、戦力になるまでの時間が短くなります。逆に教育や指導がしっかりしていない施設では、なかなか新人が戦力にならないため、先輩職員がイライラすることが増え、きつく当たることが増えてきます。
新人職員の教育・指導体制がしっかりしているかどうか入職前に確認しておく必要があります。ただし、教育・指導を受ける側の人間も業務に対してしっかりと覚えていく必要があります。
まとめ
この記事では新人職員に対するいじめについて解説してきました。もし、自分がいじめを受けていた場合は泣き寝入りせず、出来うる対処をしてみてください。我慢する必要はありません。
もし、新人職員がいじめを受けている場合は見て見ぬふりをせず、出来ることがあれば力になってみてください。表立って味方になることはできなくても、誰もいないところで「何かつらいことがあれば話を聞くよ。無理はしないように」といったように声をかけるだけで精神的な支えになることもあります。
どの職場においてもいじめというものにはメリットは無く、デメリットしかありません。まして人材不足で労働環境が厳しい職場では新人職員に対していじめは害にしかなりません。新人職員には早く戦力となって働いてほしいのに、一人前になる前にいじめで辞めてしまってはいくら経っても労働環境は改善しません。職場のいじめをなくしていくことが多くの職員にとって働きやすい職場へ改善していくきっかけになる可能性があります。