円満に退職するには-退職理由の伝え方について

転職などで会社を辞めると決心した場合、会社や上司に退職の意向を伝えなければなりません。しかし、退職理由をどう伝えるか悩む方は少なくないと思います。

上司に退職を切り出すときは緊張し、うまく伝えられるか不安になります。退職理由をそのまま素直に伝えると角が立ってしまう可能性があります。

たとえ不満があって辞めると決めた職場であっても、トラブルがなく円満に退職したいものです。

この記事では円満に退職するにあたって退職理由を上手に伝える方法や注意点などを紹介していこうと思います。

退職理由を伝える際の注意点

退職の際、退職をスムーズに進めるためにも注意しなければならない点がいくつかあります。「話を切り出すタイミング」や「伝え方」、「誰に話をするのか」などといったことをを確認しておく必要があります。

●退職の意思が固まっているのか

「本当に退職の意思が固まっているのか」、「なぜ会社を辞めたいのか」というのを確認する必要があります。意思が固まっていない場合、上司や会社に退職を悩んでいるような印象を与えてしまうかもしれません。「説得すれば退職を撤回してくれるかも」と考え、引き止めにあう可能性があります。

また、引き止めに対して心が揺らいでしまい結局退職できず、ズルズルと働き続けてしまう可能性もあります。

●就業規則の確認

退職を決意したら就業規則を確認しましょう。就業規則は常時10人以上の従業員が働いている事業所が作成しなければならない規定で、職場のルールが記載されています。労働基準監督署への届出が義務付けられています。就業規則は会社ごとに違い、従業員もその内容を把握し、従う必要があります。従業員は正社員だけでなくアルバイトやパートも含まれます。

就業規則には、就業時間や休日、賃金の支払い、退職の規定など重要なことが書いてあります。ただし、就業規則に労働基準法に反する内容があった場合は従う必要はありません。

就業規則に退職を申し出る時期や退職金などについて記載されているため、無用なトラブルを避けるためにも退職前に確認しておきましょう。

●退職の意思を伝える時期

退職の意志を伝える時期については就業規則に従う必要があります。就業規則に「退職をしたい場合は1か月前までに申し出ること」と記載してあれば1か月前までに申し出る必要があります。

正社員・パート、アルバイトを問わず、雇用期間の定めのない従業員は、民法第627条第1項では、「退職の2週間前に退職の告知を行えば問題なく退職できる」と定められています。しかし、引継ぎや円満に退職することを考えれば就業規則に従うほうが無難です。

●誰に伝えるのか

退職の意向を最初に伝えるのは直属の上司にしましょう。直属の上司のさらに上の上司や人事の職員に伝えると「直属の上司との間に何かあったのではないか」と思われ、直属の上司に迷惑をかけてしまう可能性があります。また、退職の話をするときは2人きりで、話せる時間と場所を用意してもらいましょう。

●相談ではなく「報告」という形で伝える

相談という形で退職の話をすると上司や会社に「退職をするかどうか悩んでいるのではないか」という印象を与え、引き止められる可能性があります。また、退職の意思はメールなどではなく口頭で伝えましょう。

●退職希望日について

退職日については希望日を伝え、相談という姿勢で話を進めていくことが大切です。一方的に退職日を伝えるのはNGです。また、出来る限り繁忙期や周りに迷惑が掛かる時期を避け、業務が落ち着いている時期に退職日を希望しましょう。

●退職届と退職願の違いについて

退職願いは、会社に対して退職を願い出るための書類であり、却下される可能性もあります。退職届は退職することが確定した段階で会社に対し退職、すなわち労働契約の解除を届け出るための書類です。退職届を提出した後は、退職を撤回することはできません。

退職理由について

上司に退職の意向を示したとき、退職理由を聞かれます。会社にとって重要な人であったり、人手不足の会社に務めている人であれば強い引き止めにあう可能性もあります。そうしたときに納得してもらえる退職理由を用意しておく必要があります。

●引き止めにくい退職理由を伝える

「今とは違う分野に挑戦してみたい」「別の業種で働いてみたい」など今の職場では実現することが困難なことを理由にすると引き止められにくくなります。給与面などを理由にすると上司や会社から改善すれば退職を諦めてくれるかもと思われ、引き止めにあう可能性があります。会社への不満が主な理由でないことが重要です。

●伝えないほうがよいこと

給料や休日、残業時間、人間関係など会社に対しての不満が退職理由であったとしても、それらの不満をそのまま伝えるのはNGです。上司や会社に職場の不満を言ってしまうと悪い印象を持たれ、退職日まで気まずい雰囲気で過ごさなければならない可能性があります。ネガティブなことは伝えず、前向きな退職理由にすることが重要です。また、感謝の気持ちを伝えることも大切です。

●ケース別退職理由

いくつかの退職理由の例を紹介しますが、上司に納得してもらえるように自分でもしっかりと退職理由を考えておいてください。

やりたいことへの挑戦

「違う分野や異業種に挑戦してみたい」といったことが退職理由であればそのまま伝えても強い引き止めにあいにくいかもしれません。素直に話をしても問題はないかもしれませんが、上司から「現実はそんなに甘くない」と言われる可能性があります。そうしたときは「退職の意思は変わりません」と強い決意を示しましょう。

体調不良や健康に関すること

体調面に問題がある場合もそのまま素直に話しても強い引き止めにあわないかもしれません。ただし、症状や現状をしっかり説明し、理解してもらえるようにすることが重要です。医師の診断書があればより説得力が増すので、出来れば用意しておいたほうがいいでしょう。

人間関係が理由の場合

人間関係に不満があり退職を考えている場合は、退職理由をそのまま素直に伝えることは避けたほうがよいでしょう。

「周囲に気兼ねすることなくみんなで協力して同じ目標に向かって働く仕事がしたい」というように退職の理由について表現を変えてみましょう。

可能であれば人間関係以外でもう1つ別の理由も考えておくとよいでしょう。ただし嘘偽りのない理由である必要があります。

家庭の事情で退職するとき

親の介護や結婚や育児、家族の転勤や転職など家庭の事情が退職理由であれば、そのまま伝えても問題は無いでしょう。また、基本的には細かく伝える必要はありません。

給与・休暇など待遇や環境面

給与・休暇などが退職理由である場合もそのまま素直に伝えることは避けたほうがよいでしょう。

残業時間が多い場合や休みが少ない場合は「ライフワークバランス重視してオンとオフをメリハリつけて働きたい」、給与に不満がある場合は「自分に合った評価制度の会社で一生懸命働きたい」というように表現を変えてみるとよいでしょう。
  
給与・休暇などが退職理由である場合についても、可能であれば人間関係以外でもう1つ別の理由も考えておくとよいでしょう。

転職活動の面接試験で前職の退職理由を聞かれた場合

面接試験でも必ず前職の退職理由を聞かれます。仕事に対する姿勢や他の職員と良好な関係を築けるか、ちょっとしたことで会社を辞めてしまわないかといったことを面接官は気にしています。採用する会社側は長く働き続けられる人を求めています。

面接試験でも退職理由は不平不満を伝えるのではなく、前向きな理由に表現を変えて伝えることが重要です。また、面接試験ではより突っ込んで退職理由を聞いてくることがあるので、そのために対策を立てておくことが大切です。

競合への転職の場合

競合への転職が決まっている場合は、「今、探しているところです」「何社か内定をいただきどこにするか考え中です」などというようにして転職先を伝えない方がよいでしょう。会社にとってライバル他社への転職は、技術や知的財産などが流出しないか不安に感じています。

もし、退職を引き止められたら

退職を伝える場合は強い意思を持って伝えることが重要です。交渉の余地を残さない、引き止めが不可能である理由をしっかりと伝えるようにしてください。ただし、引き止めていただいたことについては感謝の言葉も伝えるようにしましょう。

どうしても退職を認めてもらえない場合は労働基準監督署に相談するのもひとつの手です。

退職が決定したら

無事に退職が決定した後もすべきことがあります。

●退職届を書く

退職の意思を上司や会社に伝え認められた後は、退職届を提出する必要があります。会社が退職届の書式を用意していることがあるので確認しておきましょう。退職届に書く退職理由はどんな理由で退職するにせよ「一身上の都合」とするのが一般的です。また誰に提出するのかも確認しておきましょう。

●同僚、取引先にはいつ伝えるのか

同僚にいつ伝えるかも上司や会社などに相談しておきましょう。退職が決定したからといって、上司などに相談せずに同僚などに話してしまうのはNGです。退職の報告というのは少なからず同僚の士気などに影響するので、その辺のことを会社が考慮して発表するタイミングを考えます。

取引先への報告も上司や会社に相談して決めます。上司や会社に相談せずに取引先へ報告すると混乱を招く可能性があります。

●業務の引継ぎ

後任の職員に迷惑が掛からないようにしっかりと引き継ぎ作業を行う必要があります。転職後に前の会社からの引継ぎ作業についての問い合わせが頻繁にあると、業務に悪影響を及ぼす上に転職先の会社からも悪い印象を与えてしまいます。

●有休の消化

有休の消化も上司に相談しましょう。引継ぎ業務量や残りの有休の日数を考慮して、いつから有休に入るのかを決めます。

●周囲へのあいさつ

退職日にはこれまでお世話になった同僚や上司などにお礼のあいさつを行います。その時に感謝の気持ちとともにお菓子を渡すとよいでしょう。お菓子は常温保存可能で1つ1つが包装され、日持ちするものがよいでしょう。

●会社の備品の返却

保険証や会社の備品も返却します。会社の備品にはどんなものがあるのかを確認したうえで、いつ返せばいいのか上司に相談しましょう。会社の制服がある場合は洗濯してから返却します。

まとめ

「立つ鳥跡を濁さず」ということわざがあるように、退職する時は周りとトラブルを起こすことなく、上司や同僚から惜しまれつつ退職したいものです。そのためには、退職に向けてしっかり準備を行い、引継ぎ業務や普段の業務も手を抜くことなく取り組んでいかなければなりません。

世の中どこで繋がっているかわかりません。前職の会社と現職の会社が後々取引を行うことになる可能性もあります。そう考えるとやはり円満に退職したいものです。

参考サイト